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2016年1月8日

感染と過敏のあいだ その2

恒例のMGH症例検討。
76歳男性、発熱、白血球減少と肺の浸潤影。
解答編です。

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL. Case 37-2015. A 76-Year-Old Man with Fevers, Leukopenia, and Pulmonary Infiltrates.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2162-72.
Cho JL, McDermott S, Tsibris AM, Mark EJ.

その2

その1からつづき

かば:鑑別診断といっても、何も出てきませんよ…。これだけされてて全部違うんでしょ?
あ、でも結核は調べられていますね。QFTは陰性ですか‥。
膠原病も採血結果上は考えにくくなりますね。CRPは9.4でそれほど高くない…。肝機能も少し上がってるくらい。

かわうそ:そうですね。結局異常なのは、肺に影があって酸素化が悪いということくらいですね。

かば:あと、微妙に低たんぱくですね。

かわうそ:そうですけど、まあ、半年前から調子が悪いわけですからね。消耗しますよね。
状態が悪いんだろうな、ということはありますが、診断に結びつくかというと…。
培養もことごとく陰性なので困っちゃいますね。

かば:全然わからないです。

かわうそ:不明熱というカテゴリーで考えるしかないですよね。
つまり、悪性疾患と膠原病と感染症をまず考えましょう、というわけで考察されています。
さらに、この人の場合、やはり肺に異常があるということで、さらに追加の鑑別が出てきます。

かば:サルコイドーシスとかアスベストとか、鳥との接触からすると過敏性肺臓炎もちょっと考えないといけないかなってところですね。肺の影が目立ちますからね。

かわうそ:過敏性肺臓炎をすごく疑う陰影かというとどうなのかな、とも思いますけどね。

かば:あと、入院して環境変わっているし、ステロイド投与しても改善していないというところは、過敏性肺臓炎としてはちょっと合わないかもですね。

かわうそ:こうやって病歴から一つ一つ丁寧に詰めていっても、あんまり絞り込めません。
で、病理を見ていくんですが…。

かば:…、カンニングしちゃったんですけど…。

かわうそ:答えみちゃいました?そうですか…。じゃあ、このあたりは飛ばしましょう。
(´・ω・`)
病理の所見をEugene J. Mark先生が述べているんですけどね。

でも、ちょっと驚きじゃないですか?

かば:そうですね。でも意外に時々症例報告とか聞きますし、一応自分の患者で疑ったこともあります。
ステロイド投与していたりして免疫抑制のヒトには注意すべき処置って聞いていますけど。この症例では、そういう基礎疾患がないので、ちょっと意外ですね。

かわうそ:そうですか。時々いますか…。私は、国試の勉強で見たことがあるかもしれない、というレベルの認識でした。

かば:この処置はけっこうな頻度でやっているので、発症してもおかしくはないのかな、と思うんですよね。1%以下の発症率とありますね。

かわうそ:というわけで答えは、膀胱にBCGを注入したことによる、播種性のMycobacterium bovis感染でした。

かば:そういえば乾酪壊死ではなかったですね。Mycobacterium tuberculosisでないからでしょうか?
でも、抗結核薬治療でよくなったみたいで、よかったですね。

かわうそ:やっぱり結核の治療は大切ですね。
あと、過敏性肺臓炎の除外が難しいです。VATS標本では、肉芽腫はありますが、その中に菌は検出されていません。
鑑別診断でも、でも最後までもめていました。

かば:そういう過剰な反応の要素もありそうですけど。最終的には尿と血液から培養されていますしね。どちらの要素もあるということなのでしょうか。


2016年1月5日

感染と過敏のあいだ その1

あけましておめでとうございます。今年もぼちぼち更新していきます。

恒例のMGH症例検討です。
76歳男性、発熱、白血球減少と肺の浸潤影です。
まずは問題編です。

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL. Case 37-2015. A 76-Year-Old Man with Fevers, Leukopenia, and Pulmonary Infiltrates.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2162-72.
Cho JL, McDermott S, Tsibris AM, Mark EJ.

その1

かわうそ:76歳男性、発熱、白血球減少と肺の浸潤影です。けっこういろいろ病気持っている人ですね。5週間前までは元気だったようですが、その時から39度の発熱、悪寒、咳、盗汗、下痢、倦怠感、食欲不振などが出現しています。でも、いまいち疾患が絞りにくい症状ですよね。1週間経ってようやく受診して、ここで半年で5kgということで、体重減少もけっこうあることが判明しています。
このときの尿検査と血液培養では陰性でした。また、レントゲンではあまりはっきりした異常を認めていないようです。
さらに1週間後、今度はレントゲンで右中肺野に淡い浸潤影です。CTでは、さらに少量胸水と肺底部あたりに網状影を指摘されています。写真も乗っています。

かば:ふんふん。なんか、なぞな皮下気腫がありますね。あと、心臓のオペもされているみたいですね。冠動脈バイパスですかね。

かわうそ:皮下気腫については、このあと出てくるのですが、VATSされているのでそのためということです。
さて、このあとダウンしてしまって入院しています。既往歴としては、高血圧、脂質異常症、COPD、冠動脈疾患でバイパス術、心不全、末梢血管障害でもバイパスしていますね。糖尿病、痛風、前立腺肥大もあります。膀胱癌でBCG注入を7ヶ月前までやっていました。いろいろ薬も飲んでいますが、免疫抑制をきたすものはないようですね。
バイタルとしては、相変わらず40度近い発熱がありますが、その割には脈はそれほど速くないです。呼吸数はやや多く、SPO2は室内気で93%と少し低いです。身体所見としては、右季肋部の圧痛くらいです。ラボデータでは、あんまりたいしたことないです。CRPがちょっと高くてWBCが少ない、貧血が徐々に進行、腎機能や栄養状態がちょっと悪い程度です。これで疾患を絞り込むのはやっぱり難しいですね。
超音波検査で馬蹄腎、脂肪肝が発見されています。心エコーもそれほど問題無いです。
レントゲンに戻ると、右中肺野にpatchyな陰影です。CTでみると、びまんせいにGGOが出現し、特に肺底部では胸膜下に網状影が出現していることがわかりました。
ちなみに、感染症については、血液検査でも各種培養検査でも異常なしです。

さて、追加で検査したいものとかあります?

かば:全部されていますけどね…。気管支鏡とかですか?

かわうそ:そういえば、どうやらこのあたりで喀血したらしくて、気管支鏡やっています。
肺胞出血の所見はなく、悪性細胞もなし、BALでも何も培養されていません。まだ抗生剤は投与されていないようなんですけどね。
じゃあ膠原病なのかな、ということで、リウマチ科に相談した上で、ステロイドパルスが行われています。そのあと60mg/日でプレドニンが始まっています。

ステロイドで、一瞬ちょっと良くなったかな、と思ったけどまたぶり返したようです。
ここで先程も触れましたが、VATSされています。病理の所見では、基本的には炎症細胞の浸潤した結節が見つかっています。拡大写真をみてみると乾酪壊死を伴わない類上皮肉芽腫がみつかっています。気管支周囲や肺胞間隔壁の肥厚を伴っており、リンパ管に沿っているように思われます。

かば:サルコイドーシスでしょうか?

かわうそ:もちろん鑑別に上がってきますよね。
ステロイドに反応なしということで、抗生剤が始まってます。バンコマイシンとゾシンです。
ここでMGHに転院されています。このあたりで意識障害が出現してます。腰椎穿刺とか頭部の画像検査をされていますが、はっきりとした異常はやっぱり見つかっていません。

転院後、ステロイドは効果がないということでテーパリングされています。さらにここで抗結核薬が始まっています。INH、RFP、EBです。

かば:わからないまま片っ端からやっているという感じですね。

かわうそ:今のところ、肉芽腫があったということ以外、結核を疑うことはでてこなかったんじゃないかと思いますが…。あ、そうか(意味深なつぶやき)。
さて、また病歴に戻ると、造影剤アレルギーがあって、昔重喫煙歴があって、アスベスト暴露がある、と。飲酒は最近していなくて、ドラッグ使用なし。昔メキシコに行ったり、子どもが鳥を飼っていたり、猟師でしかやうさぎやきじを食べたりしているところはちょっと変わっているかもしれません。家族歴にはリウマチがあります。

さて、鑑別診断をあげましょうか?

その2につづく