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2016年11月29日

泳いだ後に血を吐く人

こんなことってあるんですね。想定外の主訴ですので、外来で遭遇したら確実に慌てる自信あります。

Exercise-induced haemoptysis as a rare presentation of a rare lung disease.
Thorax. 2016 Sep;71(9):865-8. 
Mihalek AD, Haney C, Merino M, Roy-Chowdhuri S, Moss J, Olivier KN.

2016年10月7日

かわうそ:特に既往のない若い患者が来院されます。アフリカ出身です。なぜか、頑なに「Patient」と書かれており、性別不明です。多分男性だと思うんですけど、最後まではっきり言ってくれないんです。

かば:すごいな。なぜ隠すんでしょう?

かわうそ:なにか意味があるんでしょう。
主訴は4年間続く、運動誘発性の喀血ということで来院されました。しかも、2マイルの水泳したあとに必ず喀血します。量も結構多くて100-200mlとのことです。自然に治るらしいんですけど、けっこう大変なことと思うんですけど、発症から4年目でようやく来院です。

かば:2マイルって3kmだから、すごくないですか?アスリートですか?
でも、日常的にそれだけの症状があればもっと早く受診しそうですよね。最初に泳いだときには何ともなくて、だんだん症状が出てきたということですか?

かわうそ:そのあたり気になりますけど、あんまり詳しい情報はないようです。謎が多いですね。これ以外の症状、例えば胸痛、呼吸困難などの呼吸器症状はありません。また、水泳以外の運動は、普通に楽しくできるようです。

こういうわけのわからない不思議な症例がやってきた場合、先生はどうしますか?自分なら、そんなことあるわけないと思っちゃうので、冷たい態度をとってしまう可能性ありますね。特に忙しい日なら。

かば:さすがに喀血が主訴なら、ちゃんとみると思います。100mlはすごいですよ。

かわうそ:そうでしょうね。
実は、こういう症状があるわけがないと思ってしまうのは、自分の勉強不足なだけなんです。世の中は広いです。こういうclinical entityがちゃんとあると書いてあります。swimming induce pulmonary edemaというらしいです。水泳している人や軍隊では、わりと知られた疾患らしいです。

かば:へー。防衛医大とかでは習うんでしょうか?

かわうそ:たぶんそうなんでしょう。
機序もしっかりと書いてあります。運動して心拍出量が増えて、肺血流が増えて、肺動脈圧が高くなるわけですが、水の中だと血管が広がりにくくなるので、なにやらこのあたりのバランスが崩れて、肺水腫になる、とのことです。
ただし、これだけで喀血をきたすかどうかと言われると、それは疑問でして、おそらく、血管内皮細胞が破綻するような、別の基礎疾患があるのではないかということが疑われます。

とまあ、後付ならこういうことを思うわけですが、この人はアフリカではずっと抗生剤を投与されたりして治療されていました。当然無効ですし、喀痰検査で有意な菌が検出されることもありません。
アメリカに移住してきてから、病院も変わって、改めて評価されています。

かば:やっぱりプロのアスリートではないみたいですね。レストランで働いていると書いてありますし。

かわうそ:そうかもしれません。でも、マイナースポーツなら、トップクラスの選手でもそれだけでは食べていけない可能性もありますよ?

さて、この病院でとった、現病歴が詳しく述べられています。
アメリカにきても水泳して、やっぱり水泳するたびに喀血しています。その他の呼吸器症状は全然ありません。喫煙はほぼなし。危ない薬はやっていません。兄弟には結核がいるようです。
身体所見では、口腔内衛生が少し悪い以外は突起すべき異常所見ありません。血液検査、喀痰検査、心エコー、気管支鏡検査では特に異常ありませんが、胸部CTでは異常ありです。どうみます?

かば:壁の薄くて不整なところのない嚢胞が多発していますね。

かわうそ:こういうcystic lung changeのある疾患は少ないので、鑑別もだいぶ少なくなります。

かば:多分、ここでLAMを考えてほしいので男女の区別を曖昧にしていたんでしょうね。

かわうそ:おそらくそうだと思います。この人は男性ですので、否定していただいて良いです。

かば:ランゲルハンス組織球症と嚢胞性線維症はどうですか?

かわうそ:嚢胞性線維症は、どうやらもう少し壁が厚かったり、気道に沿った分布がはっきりしてほしいみたいです。ただ、見たことないので…。
ランゲルハンス組織球症は、喫煙との関係が明瞭ですので、この人のように、あんまり喫煙していないなら、可能性は低くなります。

かば:あと、結節影もありませんし、合いませんね。
そういえば、BHD(Birt-Hogg-Dubé)症候群はどうでしょうか。

かわうそ:それは言及ありませんでした。でも、たしかに画像的にも鑑別に上がりそうですね。

かば:あれは気胸が反復するので、症状としては合わないかもしれませんが。あとは丘疹、腎腫瘍などがあるかどうかですね。遺伝性疾患なので家族歴も参考になると思います。

かわうそ:あと、ここで思いつかないといけないのは、アミロイドーシスです。
さて、気管支鏡でも診断がつかなかったので、この人はVATS生検が行われています。白黒写真なのが残念ですが、間質、血管周囲に好酸性で無構造な物質が沈着しています。コンゴレッド染色もして、アミロイドと確定しました。

というわけでアミロイドーシスだったんです。アミロイドーシスにはAAとALがあります。ALの方が、リンパ腫などの基礎疾患があって重症になるようです。
この人は4年間症状が変わらないので、二次性のAAアミロイドーシスなんだろうな、と予想されます。この辺も少し詳しく記載ありますが、割愛です。

ただでさえアミロイドーシスは珍しいんですけど、さらに水泳誘発性肺水腫を合併しているというわけで、ものすごくレアですね。
ただ、診断できても、治療の方法がないんですよね。水泳やめるしか。結局、フォローからは脱落してしまいました。

ちなみに、この論文はイギリス英語なので、edemaがoedemaと表記されています。だからか、swimming induce pulmonary oedema、略語はSIPOと書いてあります。

かば:esophagealがoesophagealと綴られるみたいですね。GERD(Gastroesophageal Reflux Disease)もGORDとかいてあるのを見たことあります。
そういえば、この報告では、SIPOとSIPEが混在していますね。たぶんアメリカ英語で書いてて、校閲をすり抜けてしまったんですね。

かわうそ:内幕が見えたような気がして、少し面白いですね。


2016年10月20日

CPAPは睡眠時無呼吸患者の心血管系イベントを抑制するか? その3

CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea.
N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.

2016年9月27日

その3

その2からつづき

かわうそ:Discussionに入ります。
もう一度結果をまとめます。心血管疾患のある閉塞性睡眠時無呼吸患者における二次予防についての本研究では、通常の治療にCPAP治療を加えたことで、重症心疾患系イベントのリスクは減らせませんでした。ただし、CPAP治療は日中の眠気を減らし、HR-QOLやmoodを改善させるなど、自覚症状については良好な効果が期待できます。

私は知りませんでしたが、実はこの結果はそれほど目新しいものではないようです。
既報について述べられています。これまでに3つ、似たような目的でランダム化比較試験が行われています。
一つ目はスペインで行われた他施設試験で、心血管疾患のない閉塞性睡眠時無呼吸患者725人が対象でした。もう一つは、単施設で冠動脈疾患でカテーテル治療を受けたばかりの閉塞性睡眠時無呼吸患者224人を対象にしています。いずれも数年間のフォローアップで、心血管系の複合エンドポイントで有意差を示せませんでした。しかし、アドヒアランス良好な患者では良好なアウトカムが得られたというサブ解析がなされています。3つ目は最近の虚血性脳卒中140人で行われたもので、CPAP治療は、2年のフォローアップでevent free survialに影響しなかったというものです。

かば:ということは、CPAP治療で心血管系、脳血管系疾患には予防効果がないということは、専門家の間ではあたりまえだったということですか?私も知らなかったんですけど。

かわうそ:みたいです。これはちゃんと言ってほしかったですけどね…。
limitationとしては、この研究を始めた時期には参加した幾つかの地域では、睡眠時無呼吸の診断や治療が一般的ではなかったということがあります。ただし、研究施設に対して説明やモニターを十分にして、質の良い研究になるよう配慮したとのことで、試験の結果に影響するようには思えません。

また、今研究でのCPAPのアドヒアランスは平均で3.3時間/日であり、これが問題なのかもしれないといっています。
これくらいのアドヒアランスのレベルは、既報と同程度なんですが、心疾患系のアウトカムに影響するほど十分ではなかったのかもしれません。

かば:もっとアドヒアランス良好な場合に、はっきりとした治療効果があるかもしれないってことですか?

かわうそ:と、言いたいのだと思います。でも、サブグループ解析の結果を見ると、それもどうなんでしょうかね…。

また、効率的にリクルートして、他施設でのデータに矛盾がないようにするため、conventionalでstandardなPSG検査ではなく、単純なスクリーニングデバイスを用いて被験者を集めています。ここが問題なのかもしれません。
ただし、AppneaLinkは既報によると、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸を診断するのに信頼できるデバイスということですので、やはり結果にそれほど影響するとは思えませんね。

かば:中等症の閉塞性睡眠時無呼吸を含めたからでないですか?重症の人なら違うかも。

かわうそ:それも、いちおうサブグループ解析でやってます。

かば:重症だと人数が少なくなるので有意差が出にくいとか。だから、重症の人だけを2000人集めたら有意差がでるかも。 実臨床でも、中等症の人だとコンプライアンスが悪い印象ありますから。

かわうそ:かもしれませんが、それだけの規模で研究してようやく有意差がでるくらいの結果だとしたら、そんなに熱心に治療しないといけないのかって思いますけど。

かば:自覚症状が非常に改善した人を集めたらどうなんでしょうか?

かわうそ:なるほど。たしかに、そういうサブグループ解析はなかったように思いますが、経験上、睡眠が改善してばっちり眠気がとれたといって満足している人は、やっぱりアドヒアランスが良好な気がします。
だから、アドヒアランス良好群とそれほど異なるグループにはならないのではないでしょうか。

睡眠時無呼吸の人っていろいろいますからね。日中の眠気などの自覚症状がひどい人から、家族からいびきがひどいと言われるくらいで、自覚症状が全くない人とか。
自覚症状の強い人が、CPAPをつけて眠気が改善されたりすれば、モチベーションが上がってつけ続けてもらえることが多いですが、自覚症状のもともとない人は、マスクの不快感が強くて、続けられない人がいますよね。
そういう人につけ続けてもらうために、AHI低下の他に、将来の脳卒中や心筋梗塞を予防する目的でつけ続けてください、と言っていたんですけどね。こういう事実を知ってしまうと、これから情熱を持って診療続けられないですよ!

かば:そんなにCPAP治療に情熱もってやってたんですか?(;一_一)

2016年10月14日

CPAPは睡眠時無呼吸患者の心血管系イベントを抑制するか? その2

結果です。なかなかおもしろい結果ですよね。

CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea.N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.

2016年9月27日

その2

その1からつづき

かわうそ:結果です。15325人あつめて、そのうち5844人が適格基準に当てはまりましたので、アプニアリンクによる検査をしています。3246人が中等症以上になりましたので、run-in periodの1週間、シャムCPAPをしています。2717人が忍容性があり研究に参加しました。これをCPAP+usual care群とusual care alone群に半分ずつにわけていますが、なんやかんやで減って、結局2687人が解析されました。
平均年齢は61歳、81%が男性、BMIが29、ODIは28でした。ESSは7.4でそれほど高くありません。途中で脱落したのは147人でした。フォローアップの中央機関は3.7年です。
Table 1が患者背景になります。

かば:フォローのレベルがハンパないですね。

かわうそ:お金かかってますよね。
アドヒアランスを見てみると、シャムCPAPの段階では5.2時間着用していましたが、1ヶ月後には4.4±2.2時間に減っています。12ヶ月後では3.5±2.4時間で、それ以降は安定していました。AHIは3.7まで減少しており、OSAがCPAPで良好にコントロールされていることを示唆していました。CPAP群1346人中566人、42%は1日あたり4時間以上着用しておりアドヒアランス良好でした。いろいろ批判もあるでしょうけど、実臨床の感覚からするとこれくらいなんじゃないでしょうか?usual care alone群の中でも、90人、6.7%がCPAPを試みられたようです。うち57人のみが治療を継続しているとのことでした。よいのでしょうか?
薬物治療、食事・喫煙などの生活習慣、BMIの推移などには両群間で差がありませんでした。

さて、プライマリーエンドポイントについてですが、全部で436人で心血管系のイベントが記録されています。うちわけをみると、CPAP群で229人、17.0%に対し、usual care alone群では207人、15.4%でした。HRは1.10で、むしろCPAPで治療したほうが、心血管イベントを起こしやすいという結果でした。もちろん、95%信頼区間が0.91-1.32、p値0.34ですので有意差はありませんでしたが。Table 2、Figure 2に書いてあります。

かわうそ:さすがにこれでは困りますので、サブグループ解析を追加していろいろ解析していますが、それでもCPAP群がよかったという結果はでませんでした。
参加者が多様ですので、中国とそれ以外、年齢、性別、OSAの重症度、BMI、日中の眠気の有無、心血管系疾患の既往、耐糖能障害など、いろいろやっています。

かば:涙ぐましい努力ですね。

かわうそ:ただ、CPAP治療のアドヒアランス良好群では、アドヒアランス不良群やusual care群とは異なっていました。

名前だけはおなじみ、で有名なプロペンシティースコアマッチングの結果を、アドヒアランス良好群で見てみましょう。CPAP群でアドヒアランス良好だった561人と、それとマッチするようなusual care alone群を集めてきて比較しました。この集団だと、CPAP群では86人(15.3%)でイベント発生に対してusual care alone群では98人(17.5%)でした。HRが0.80で95%CIが0.60-1.07、p=0.13でしたので、有意差はないもののCPAP治療が良好な結果につながりました。
カプランマイヤー曲線でもこの結果を確かめたとのことです。図はsupplementary appendixです。

かば:想定したよりアドヒアランスがよくなかったんですかね。アドヒアランス良好群がもっといたら、ちゃんと有意差がでたのかもしれませんね。

かわうそ:でも、これくらいギリギリの差しかないなら、苦しくめんどくさいCPAP治療をしたくないと患者さんが考えても、止められないですよ。

セカンダリーエンドポイントでも、ほとんど有意差がついていませんが、唯一、CPAP群で一過性脳虚血発作による入院が増えたという結果がでました。RR=2.09、95%CI=1.05-4.99、P=0.04です。また、アドヒアランス良好群とusual care郡のプロペンシティースコアマッチングの解析結果では、卒中や脳血管イベントの複合アウトカムでCPAP群がよいという結果がでていますが、これも多変量解析では消えてしまいました。

かば:なんならCPAP群の方が悪いですね。この結果って、あんまり話題になっていないように思いますけど。黙殺されてません?

かわうそ:そんな気がしています。
ただ、自覚症状だけはCPAP群で良好でした。Table 3に載っています。
ESSがCPAP群でベースラインとくらべて3減っています。HADSも良くなったと言っていますが、これが臨床的に意味のある違いなのかどうかは知りません。統計的に有意差があっても、臨床的には意味のない違いっていうのは、けっこうこっそりと論文に紛れ込んでいたりしますから、ちゃんと元論文にあたってみる必要があるんでしょう。やっていませんが。SF36もCPAPでよかったと書いてありますし、健康状態が悪くて仕事を休んだ日も少なくなっています。

でも、ESSで3の差って、CPAP治療の劇的な効果からすると、ちょっとしょぼくないですか?

かば:あまり自覚症状のない人を集めたらしいんで、しょうがないのでは?

かわうそ:なるほど。
まあ、ちょっとせつない結果の論文ですので、ここくらいは著者の主張を信じてあげたいと思います。

そういえば、血圧は経過中下がっていませんでした。これは既報と違うところです。

さて、睡眠時無呼吸で気になるのは交通事故との関係ですよね。これは、Table 4に書いてあります。
交通事故だとか、事故による外傷とか、ニアミスとか書いてあります。データのある人数が少ないからなのかもしれませんが、これも有意差ありませんでした。

タクシーとかトラックの運転手が、睡眠時無呼吸で受診したばあい、今後どうなるんでしょうね。何をやっても事故が減らないんですけど。

その3へつづく。


2016年10月11日

CPAPは睡眠時無呼吸患者の心血管系イベントを抑制するか? その1

これまでの診療を一変させうる、けっこう衝撃的な結果と思いますけど、あんまり話題になっていないように思うんですけど?
イントロから方法までです。

CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea.
N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.

2016年9月27日

その1

かわうそ:睡眠時無呼吸は、いびきとか日中の眠気が問題なだけではないんですよね。
夜間に一時的な低酸素血症になって、交感神経が活性化され、高血圧になったり、酸化ストレスや炎症反応が亢進、血液過凝固傾向になるとされています。また、胸腔内の陰圧が上がることで、心臓、大血管に強い力学的ストレスがかかるそうです。
これまで報告されているコホート研究では、睡眠時無呼吸と心血管系疾患、特に脳卒中などのイベントには強い相関があるとされてきました。

かば:われわれには特になじみのある分野ですね。

かわうそ:直接的に関与したことはないですが、噂はよく聞いてました。
さて、過去のRCTでは、CPAP治療によって、血圧が低下するとか、血管内皮細胞の機能、インスリン抵抗性の改善などの効果も報告されています。
これまでの観察研究の報告では、CPAP治療により心血管系の合併症や死亡を、特にアドヒアランスの良い人で減らすと言われていました。

心血管系疾患の既往のある人の4-6割で、OSAが合併していると言われています。こういう患者さんでは、十分な薬物治療をしているにも関わらず心血管系のイベント再発のリスクが高いので、CPAP治療を追加することでリスクを予防できるかもしれないと言われていました。

かば:これまで証明はされていなかったんでしょうか?意外ですね。

かわうそ:この確認のため、今回のSAVE study(Sleep Apnea Cardiovascular Endpoints study)というものをやってみた、ということです。「OSA患者の心血管系イベント発生率の減少の点でCPAPが効果があるかどうかを評価するためにデザインされた二次予防研究」らしいです。

かば:ちょっとEが強引ですね。

かわうそ:方法です。研究デザインとしては、国際的、多施設共同、ランダム化、パラレル、オープンラベルの研究デザインです。シャムCPAPではないので、どちらのグループに入ったかは、医師も患者もわかっているんですが、エンドポイントとなるイベントの評価については、ブラインドされているということです。
Philips Respironics社とResMed社が研究資金と機械を提供しました。

かば:けっこうプレッシャーかかりますね。結果を出さないといけない。

かわうそ:参加者は7カ国、89の施設で集められました。適格基準は、45-75歳で、心血管系または脳血管系疾患があり、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸と診断されていること、です。閉塞性睡眠時無呼吸の診断はPSGではなく、ApneaLinkというResMedの機械をつかって、ODI4>12で診断しています。あと、あんまりにも自覚症状が強い人は除外されています。ESSが15以上、または重症の低酸素血症、チェーンストークス呼吸で居眠り運転事故のリスクが高いと診断された場合は除外されています。

かば:なんで自覚症状が強い人は除外なんでしょうか?

かわうそ:書いてなかったので私の推測なんですけど、自覚症状が強い人に対して、CPAP治療をしないのが、倫理的に問題があると判断されたのかもしれません。

参加者はCPAP治療に対して最低限のアドヒアランスが必要ですので、1週間のrun-in periodを設けてシャムCPAPを着けて寝てもらい、平均3時間以上着用できた人を選んでいます。

CPAP治療は、Philips Respironics社のREMstar AutoのMかPRが使われています。はじめの一週間はオートマチックモードにセットされ、それからは記録されたデータに基づいて計算された90th percentileの圧に固定されます。心血管系リスクを下げるための投薬治療などはガイドラインに従って行われました。また、すべての参加者は睡眠習慣改善のためのアドバイスをうけています。診察は、1、3,6,12ヶ月とそれ以降1年毎に設定されました。年一回の診察以外に半年ごとに電話での調査も行われました。

測定項目は、血圧、脈拍、投薬内容、health behaviorが記録されています。CPAP群では、CPAPのアドヒアランスのデータもです。ランダム化のとき、6ヶ月、2年、4年目に身体測定と、質問票としてESS、SF36、HADS、EQ5Dを取っています。

どちらの群に割り当てられたかを知らないcommittee memberが、心血管系のアウトカムを判定しました。
プライマリーエンドポイントは、心血管疾患の複合アウトカムです。ここには、心血管疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、心不全、急性冠症状、一過性脳虚血発作による入院です。
前もって指定したセカンダリーエンドポイントとしては、カテーテル治療、心房細動、糖尿病発症、全死亡などを追加しています。あとは自覚症状、QOL、気分などを見ています。
安全性についてのエンドポイントには、運転中や仕事中に怪我に繋がったような事故など、参加者の居眠りに関係した項目があり、これも興味あるところです。

統計は省略します。

かば:かまわんよ。

かわうそ:しのびねえな。

その2へつづく。


2016年10月3日

ジャディアンスって何? その2

エンパグリフロジンという新しい種類の糖尿病薬についての論文です。

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34. 
Wanner C, Inzucchi SE, Lachin JM, Fitchett D, von Eynatten M, Mattheus M, Johansen OE, Woerle HJ, Broedl UC, Zinman B; EMPA-REG OUTCOME Investigators.

2016年9月5日

その2

その1からつづき


かば:患者背景とかはどうなんです?

かわうそ:65歳前後でBMIが30くらい、A1cが8くらいです。血圧や脂質異常症はコントロールされているようですね。
ACEやARB、メトホルミン、SU剤などの服用率は高いです。

かば:BMIが30って聞くと、これをそのまま日本で当てはめて使っていいのかわからないですね。

Figure 2をみると、もともと腎機能の良くって蛋白尿がない人には、あんまり効果がないんでしょうね。腎機能の悪い人には意味のある薬なのかもしれません。

かわうそ:そうかもしれません。ただ、どういう人に使うべき、ということについては、考察でも触れられていませんでした。なにせ腎機能悪化進行抑制効果が初めて証明されたわけですので、eGFRが低くて禁忌になっていなければ、全員につかうべき、くらいのテンションなんでしょうか。

腎機能について言えば、そもそも尿糖が出ているというのは、けっこうどきっとする検査異常ですよね。薬でそういう状態を作ってしまうというのが、腎機能の予後的にどうなのか、という懸念があります。
で、それについての検討がされています。Figure 3です。
プラセボ群だと、経時的にeGFRが低下しています。それと比較してエンパグリフロジン群では、飲み始めにややeGFRが低下するものの、そのあとは安定して変化ありません。
さらに、内服終了後、エンパグリフロジン群ではもとのレベルまで回復するという結果まで出てしまっています。

まあ、プラセボ群で悪くなったと言っても、3年間でeGFRで4くらいなので、それがどれくらい意味があるのかというのも…。

長期フォローの研究ですので、尿蛋白やeGFRなどの検査結果で差がでたと大騒ぎするのも、ちょっと。あくまでサロゲートマーカーにすぎないんですから。

とはいうものの、こういう結果がでた糖尿病の薬が初めてということなので、期待が大きいんでしょうね。低血糖発作もあまりないようですし。

ちなみに、adverse event、有害事象についても一言いいですか。

かば:どうぞ。

かわうそ:最近の傾向なんでしょうけど、内服中におきたあらゆるイベントをここに入れてしまっているんですけど、なにせやたら多いんです。どちらの群でも9割くらいが副作用を報告されています。severeだとかseriousな副作用ですら、3-5割で報告されたことになっています。ここまで来ると、かえって本当の薬の副作用がわからなくなっちゃうように思いますけど。

かば:ネットで調べると、「エンパグリフロジンは、プラセボと比較すると、心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中のリスクを14%有意に低下させた」だとか「3人に1人の割合で心血管死を抑制した」、らしいんですけど。
ネットでは、素晴らしい結果だ、という好意的な評価が多いみたいです。

かわうそ:ほんとですか?なんか、ここに書いてある数字からは想像できない数字ですけど。有害事象の表に、any deathっていうのがありますけど、5-6%くらいしかないです。腎不全死が少ないんですから、ほとんどが心血管死ってことですよね。なら、そんな華々しい結果になりますかね?
まあ、もとの論文に当たってみないとなんともいえませんけど。

かば:そういえば、エンパグリフロジンの投与量が2種類あって、それを一緒の群として解析するのもどうなんでしょうか?

かわうそ:添付文書を見ると、体格や腎機能で用量を調整するわけではなく、効果不十分な場合は増量らしいですし、たしかにおかしいですね。

とにかく、いろいろツッコミ所のあるよい論文だったと思います。


2016年9月30日

ジャディアンスって何? その1

エンパグリフロジンという新しい種類の糖尿病薬についての論文です。

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):323-34. 
Wanner C, Inzucchi SE, Lachin JM, Fitchett D, von Eynatten M, Mattheus M, Johansen OE, Woerle HJ, Broedl UC, Zinman B; EMPA-REG OUTCOME Investigators.

2016年9月5日

その1

かわうそ:薬剤名はジャディアンスっていうんですけど、知ってます?

かば:すいません。知らないです。糖尿病も最近新しい薬が多いですね。

かわうそ:ナトリウム・グルコースの共輸送担体(SGLT)を阻害するという、これまでとは違った機序で血糖を下げます。自分の昔の生理学の知識では、腎糸球体で濾しだされた糖とナトリウムを尿細管で再吸収していたと思うんですけど、ここを止めることで糖の再吸収を抑制します。
つまり、余分な糖を尿糖として排出することで血糖値を下げるという理屈です。そうすると糸球体内圧も減って、糸球体の傷害も抑制されるのではないかと仮説されます。

かば:ちょっと何言ってるかわかんない(笑)

かわうそ:(サンドウィッチマン富澤?)
…。さて、2型糖尿病かつeGFR≧30の人を集めています。で、このエンパグリフロジンを10または25mg、またはプラセボを投与しています。ほかの糖尿病治療や心血管治療はガイドライン通り普通にやっていて、それに上乗せしたときの効果を評価しています。
腎障害としては、顕性アルブミン尿が新たに出現、Creが2倍になる、透析が始まる、腎不全死というものを複合アウトカムとして評価しています。

もともと、エンパグリフロジンの効果を調べる研究として、EMPA-REG試験という大規模な研究がありました。
プライマリーアウトカムは、心血管系の複合アウトカムです。いつもの通り、心血管系疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中になっています。
で、もともとのセカンダリーアウトカムとして、微小血管の傷害発生を設定していました。網膜症で光凝固したとか硝子体出血があったとか失明したとか、それと腎機能の悪化というものを設定しています。ただ、どうやら殆どのイベントが腎機能の悪化だったらしくて、今回はそれだけを取り出して解析したものの報告ということになっています。

結果ですけど、エンパグリフロジン群では4124人中525人で12.7%、一方プラセボ群は2061人中388人で18.8%でした。当然有意差がついて、HRなんかも0.61ということで、非常に効果的でした、と書いてありますけど…、これは、なんと言ったらいいか…。

かば:どうしました?すごい結果じゃないですか。

かわうそ:あんまり糖尿病における蛋白尿の重要性を認識していないだけなのかもしれませんが、顕性アルブミン尿の出現と透析を一緒にして複合アウトカムにしていいんでしょうかね?それに、Creが2倍になるのも確かに問題ですが、透析導入や腎不全死と比べるとちょっと…。

実際、Creが2倍になった症例は、エンパグリフロジン群4645人中70人、1.5%に対して、プラセボ群で2323人中60人で2.6%なんですよ。
腎代替療法についても、エンパグリフロジン群では4687人中13人(0.3%)、プラセボ群で2333人中14人(0.6%)ですからね。5割抑制しました、とだけ言われればすごいですけど、NNTは1/(0.006-0.003)=333ですし。そりゃ、透析ってのは大事ですから、それでもいいんだ、と言われればそれまでですが…。

かば:とにかく、ほとんどのイベントが顕性アルブミン尿ということなんですね。

かわうそ:そうなんです。ここまで一方的なアウトカムの差があるのに、複合アウトカムとして扱っていいのかな、と思います。まあ、ちゃんとアブストラクトに数字が出されているので、読めばいいんでしょうけど。

ちなみに、ネットで検索したら、ベーリンガーとイーライリリーのプレスリリースを見つけました(https://www.lilly.co.jp/_Assets/pdf/pressrelease/2016/16-34_co.jp.pdf)。こちらでは、この辺りの違和感は巧妙に隠された形だと言わざるを得ません。うそは言っていないんでしょうけど、ズルいと思います。

あとですね、これはもしかしたら既報で述べられているからなのかもしれませんが、血糖降下薬ならA1cがどれくらい減ったか、くらいは書いてほしいんですけど、どこにもありません。臓器障害の抑制という、絶対的な目標について調べているわけなので、A1cのようなサロゲートマーカーは眼中にないのかもしれませんけど。
都合の悪いことだから書かれていないのか、当たり前だから書いていないのか、不要だから書かれていないのか。ちょっと不自然に感じます。

その2へつづく



2016年7月27日

隠れた病変 その3

NEJM、clinical problem-solvingです。
24歳の生来健康な女性の、突然の左足の痛みです。
最終回です。ようやく診断できました。

CLINICAL PROBLEM-SOLVING. The Hidden Lesion.
N Engl J Med. 2016 Jun 2;374(22):2160-5.
Lee AI, Ochoa Chaar CI.

2016年6月10日

その3

その2からつづき


かわうそ:案の定というか、3ヶ月後に再診した時に、左足の腫れを訴えています。この時大腿周囲径を測定してみたら4cmもの左右差がありました。

かば:腫れてるとか赤いとか、主観的な記載だけでなく、こういう客観的な指標をカルテに残せればかっこいいですね。

かわうそ:コンサルトしやすいかも、です。
さて、腫脹の原因として、こういう症例で血管が開通した後に一過性に腫脹することもありうる、だから治療失敗ではない可能性もある、と慰めのようなコメントが載っていますが、基本的にはreccurenceと言ってよいでしょう。
ちなみに、我々がこういう疾患を見た場合、圧迫帯とか弾性ストッキングとかでとりあえず対応しがちですけど、予防効果としては限定的だ、と寂しいことが書いてあります。

で、ドップラーエコーをしてみたところやっぱり閉塞しています。血管径の呼吸性変動が消失していて、相当中枢から詰まっていることが予想されました。
さて、次する検査はどうしましょう?

かば:・・・。

かわうそ:もうすでに我々が当直で診るレベルを超えていますので、わからなくて当然ですし結局専門科に任せることになるんでしょうけど。まあ、循環器科なのか血管外科なのかわかりませんけど。

最終的には、総腸骨静脈にステントを入れました。Figureを見てみると、ステントを入れる前後での血管造影の写真が載っています。ステント留置前には、本来あるべきところに総腸骨静脈が全く認められず、代わりに側副血行路が山程見えています。留置後にはきちんと総腸骨静脈が造影されて側副血行路が見えなくなっています。

かば:これ全部側副血行路ですか…。
で、次の図が血管内エコーですね。

かわうそ:まず、総腸骨静脈がなんとか開通した状態で検査しています。すぐ近くに総腸骨動脈があります。やっぱりこれが圧迫していたようです。というわけで、やはりMay-Thurner症候群ということです。
CTの時は、閉塞していたため診断できなかったんでしょう。血管内エコーで診断できた症例でした。

いくつか教訓的なポイントがあると思います。

まず、外傷とか蜂窩織炎とかの診断に飛びつかず、より致命的になりうる深部静脈血栓・肺塞栓を疑っておくこと。
特に、呼吸困難や頻脈という微妙な情報をおかしいと思うこと。
深部静脈血栓症と診断した場合、この人に発症することが典型的といえるかどうか、リスク因子を検討すること。
くらいが挙げられるでしょうか。

そういえば、この人が深部静脈血栓症のリスクが低いといえるほど活動的かどうかという点については、私は少し疑問に思っています。
というのも、このCTの写真をみると、かなり体格がよいと言わざるを得ません。

かば:画面いっぱいに皮下脂肪がありますね。

かわうそ:2日前に5km走ったっていうのも、本当は久しぶりの運動だったのでわざわざ言ったのかもしれません。
だから、1回目に発症した際には、肥満だししょうがないかも、と思ってしまうかもです。
でも、2回目に発症した時にはしっかりと診断して、3回目の発症を防ぎたいところです。

かば:May-Thurner症候群はけっこうこの勉強会で名前出てきますよね。

かわうそ:実際、昔はDVTの数%に見つかるだけ、とされていたのが、血管内エコーをするようになったことで半数以上でMay-Thurner症候群が診断されるという報告も引用されています。
疑って検査しないとわからないわけですし、相当見逃されているんでしょう。血管内エコーという診断器具の出現により、新しくトピックになっている疾患なのではないでしょうか。


2016年7月22日

隠れた病変 その2

NEJM、clinical problem-solvingです。
24歳の生来健康な女性の、突然の左足の痛みです。
やっぱり再発しました。

CLINICAL PROBLEM-SOLVING. The Hidden Lesion.
N Engl J Med. 2016 Jun 2;374(22):2160-5.
Lee AI, Ochoa Chaar CI.

2016年6月10日

その2

その1からつづき


かば:それにしても、こんな若い女性に突然発症しますかね?ランニングしているくらいですし、動かないでじっとしているような人ではないと思います。これまでの話ではリスク要因がなさそうです。
凝固能の亢進とか、血栓の原因を探るべきなんじゃないですか?

かわうそ:たしかに。すぐに診断できて治療できてラッキーと思っちゃダメですよね。「妙に変だなー」と思って背景を探りましょう。
では、どんな病歴を聞いたり、追加の検査をしたいですか?

かば:妊娠とかピル内服とかですね。あと、喫煙歴とか。アメリカならこういうときイリーガルドラッグを使っているかどうか熱心に聞いてますよね。

旅行とかも必要ですね。変わったところに行ったかどうかだけでなく、長時間動けないようなイベントがあったかどうかがわかると思います。
血液凝固関係の既往、家族歴も知りたいところです。血管炎など膠原病とかも?

かわうそ:さすがですね。どんどんでてきますね。
実はピルは飲んでいます。喫煙歴ありますが、2年前にやめています。飲酒はほどほどだそうです。
父親が関節鏡での膝の手術のあとでDVTになったということなので、ひょっとしたらこれは遺伝性の血液凝固異常と関係があるのかもしれません。ただ、そうでないかもしれない、という歯切れ悪いコメントが載っています。
どうやら、初回の発症なら、それほど精査は要らないのではなかろうか、というのが筆者の意見のようです。それはそうかもしれません。

ただ、主治医の先生はこの時点でいろいろ検査を追加しています。血液凝固能の検査や遺伝子変異などです。
どうやら、ループスアンチコアグラントが陽性に出たといっています。プロテインCだとかプロテインSだとかも当然のように測定されていますが、このへんは本当に弱い分野ですのでコメント差し控えたいと思います。

そして、残念なことに、退院後5日目に同じ症状で受診しています。エコーでも血栓を確認しました。Fig 2によると、総腸骨静脈から膝窩静脈までずっと血栓が詰まっているようです。

かば:すごい血栓っぷりですね。完全閉塞ですね。ヘパリンが入っているんですよね?それなのにこうなってしまうのは、さすがにおかしいですね。
何か血管の流れを障害させるような腫瘤があるのかもしれません。

かわうそ:でも、CTとっているわけですからね。さすがにそういう腫瘤病変があればわかりそうです。
あと、ヘパリンが本当に治療域に入っているかどうかは調べておくべきですけど、さすがに大丈夫だったと書いてあります。

かば:血管炎はどうでしょうか。

かわうそ:そうですね。あと、抗リン脂質抗体症候群とか、ベーチェット病とか。occult tumorで凝固しやすい状態になっていないかはチェックしておきたいところだと書いてあります。

そして解剖学的異常です。May-Thurner症候群をあげましょう。知ってました?

かば:前、勉強会で出てきましたね。調べた覚えあります。

かわうそ:腸骨動脈が腸骨静脈を圧迫するんですね。ちょっとこの辺りの解剖がよくわからないのですが、「左」総腸骨静脈が「右」総腸骨動脈と交差する部分の問題が一般的なようです。だから左に症状がでることが多い疾患です。
というわけで、ここでもう一度CTをよく見なおしてみました。でも、やっぱり腹腔内、骨盤内に腫瘤病変やリンパ節腫脹、総腸骨静脈の圧迫などはありません。
でも、血管炎なんかは画像で見つけるのは難しそうですね。

しかたがないので(?)、もう一度カテーテルでの血栓除去をして、血管は開通しています。

そうこうしているうちに突然血小板数が15万くらいに下がっています。もともとが30万くらいありましたので、一気に半分になったことになります。

かば:HIT、heparin induced thorombocytopeniaですね。未分画ヘパリンを使っていたんでしたっけ?

かわうそ:実はHITかどうかを診断するための検査というのがいろいろあるみたいです。私は全然知りませんでしたけど。HPF4抗体を測定したり、serotonin release assayとか。ここでは、この辺の検査をしてHITではなかったという診断になっています。でも、なんだかんだでヘパリンから別の薬に変えたところ、血小板数は回復したし、足の腫れも引いてきたのでめでたしめでたし、ということでワーファリンの内服に変えて退院しました。

かば:ここで退院していいのか、というところは疑問ですよね。

かわうそ:そうですよね。治療はうまく行ったのかもしれませんが、原因を追求せず返してしまうと、たぶん3回目がありますよね。
まあ、「要らないんじゃないの」とか言われながらも、下大静脈フィルターが留置されていますので、再発したとしても足が腫れる程度で、肺塞栓など致死的な疾患は回避できると思ったのかもしれませんけど。


その3へつづく


2016年7月20日

隠れた病変 その1

NEJMのclinical problem-solvingを読みました。
24歳の生来健康な女性の、突然の左足の痛みです。
とりあえず前半戦です。

CLINICAL PROBLEM-SOLVING. The Hidden Lesion.
N Engl J Med. 2016 Jun 2;374(22):2160-5.
Lee AI, Ochoa Chaar CI.

2016年6月10日

その1

かわうそ:2日前に5kmくらいのランニングをしたのでそのせいかとも思ったらしいのですが、こむら返りのような痛みが左足にあって、おなかやおしりにまで広がっているとのことです。
でもよくみると足が腫れているし、労作時の呼吸困難もあるようなんですよね。
発熱、胸痛、安静時呼吸困難はありません。走ったからといって、ケガをしているわけでもありません。
バイタルはほぼ正常ですが、頻脈(102/分)だけがあってちょっと気になります。

足の腫れについては、診察上、ふくらはぎから大腿にかけて、びまん性に発赤、浮腫を認めました。

さて、この病歴を聞いて、どんな鑑別診断をあげて、どんな検査をしますか?

かば:深部静脈血栓症を疑って、下肢静脈エコーです。

かわうそ:もちろんそうですね。
ここのコメントには、片側の足の疼痛、発赤、腫脹ならまずは外傷とか蜂窩織炎を考えろとのことです。
でも、所見とはちょっと合わないですし、この方には胸痛の訴えはないものの、しっかりと呼吸困難があるので、深部静脈血栓・肺塞栓を念頭に置くべきですね。だから、エコー、造影CT、D-dimerをやっています。

さらに、この方は腹痛もあるので、血栓の原因として、腹部の血管を圧迫するような病変があるのでは?と疑っておくべきだ、とされています。ただ、ここまで考えられるのはちょっとレベル高いですよね…。

さて、深部静脈血栓・肺塞栓についてはWell's scoreというものがあって、これをスコアリングして疑わしければ侵襲的検査にうつるようです。
私はこの基準は知りませんでしたが、けっこう常識的なものです。外傷があるとか、長期臥床があるか、血栓傾向やそういう薬剤使用歴があるかとかの項目があります。

さて、次はCTの写真です。読影してもらおうと思いましたが、これはすぐに分かりますね。血栓が両側下葉にいく血管内にたくさん見つかりました。
なんなら、肺野にも肺梗塞を疑うようなwedge shaped infarctionが左の肺底部にあります。

そして、ドップラーエコーで左下肢に血栓がみつかりました。その他、トロポニンT、BNP、血球数、PT、APTTなど含めて血液検査では特に異常なしです。
で、治療はどうします?

かば:抗凝固です。ヘパリンですね。

かわうそ:出血が否定されるなら、検査の結果をまたずにエンピリカルにはじめてもいいくらいだとエキスパートオピニオンで言っています。

この症例では、抗凝固療法だけでなく、下大静脈フィルター留置と、カテーテル下での血栓溶解除去治療をしています。

実はカテーテルでの早期の血栓溶解除去についてはエビデンスがあるようですが、フィルター留置についてはそうでもないというコメントが載っています。
フィルターを留置するのは、状態が悪くて抗凝固ができないような人に予防的に行うものとされているようで、この方の場合は当てはまりません。

とは言え、速やかに診断と治療に成功しており、めでたしめでたしと言いたいとこですが、まだ前半なんですよね。


その2へつづく


2016年6月30日

スタチン神話再び?

降圧剤と高脂血症治療薬の効果についての論文です。目新しいところは、リスクの小さい人が対象という点です。

Blood-Pressure and Cholesterol Lowering in Persons without Cardiovascular Disease.
N Engl J Med. 2016 May 26;374(21):2032-43.
Yusuf S, Lonn E, Pais P, Bosch J, López-Jaramillo P, Zhu J, Xavier D, Avezum A, Leiter LA, Piegas LS, Parkhomenko A, Keltai M, Keltai K, Sliwa K, Chazova I, Peters RJ, Held C, Yusoff K, Lewis BS, Jansky P, Khunti K, Toff WD, Reid CM, Varigos J, Accini JL, McKelvie R, Pogue J, Jung H, Liu L, Diaz R, Dans A, Dagenais G; HOPE-3 Investigators.


2016年6月8日


かわうそ:降圧剤は、ARB(カンデサルタン)とサイアザイド(ヒドロクロロチアジ)の合剤、つまりエカードです。
高脂血症治療薬は、ロバスタチンですので、クレストールですね。

かば:うちの病院には合剤少ないんですよね。

かわうそ:実は、今回のNEJM(2016年5月26日号)では、一連の研究で3つの同じような論文が載っているんです。
同じような軽度のリスクの人に、降圧剤群とプラセボ群の比較、高脂血症治療薬群とプラセボ群の比較、そしてこの、降圧剤と高脂血症治療薬のコンビネーション群とダブルプラセボ群の比較です。

かば:すごいですね。それを全部やったんですね。

かわうそ:それぞれ3000人ずつ、合計12000人を集めて、これを中央値で5.6年間フォローアップしています。

かば:…(絶句)。

かわうそ:リスクの高い人、心筋梗塞発症後の再発予防ではなく、それほどリスクの高くない人に使った時の効果をみる、というのが目的です。
では、どんな人が含まれるのか、ということですけど、methodsのところにはあまり詳しく書いてありません。男性なら55歳以上、女性なら65歳以上で、心血管系の疾患がなく、年齢以外に少なくとも1つ以上のリスク要因がある人、と書いてあるのみです。

かば:オンラインサプリメント参照ってありますけど。

かわうそ:当然お金を出していないので読めませんでした。
ただし、患者背景のTable 1が参考になると思います。ウエスト/ヒップ比が高い、喫煙歴、HDL-Cho低値、耐糖能障害、家族歴、腎機能障害とかです。
高血圧や脂質異常症は不問ということです。それにもかかわらず、降圧剤と高脂血症治療薬を使うという実験計画がドラスティックでよいですね。

かば:血圧高くない人にも、降圧剤を出すんですか?

かわうそ:そうなンですよ。高血圧のあった人は3割くらいしかいません。平均140/80くらいです。
高脂血症についても総コレステロールが200、LDL-choも120強です。

こういう人がほんとうにマジメに飲むのかどうか疑問だったのでしょうか、最初にお試し期間を設けています。4週間まず内服していただき、コンプライアンスだとか副作用だとかをチェックしたうえで、本番に臨んでいます。最初は6週間、それから6ヶ月毎フォローしています。

アウトカムについては、ちょっと注意が必要です。流行りの複合アウトカムが採用されています。
primary outcomeは、心血管系による死亡、非致死性の心筋梗塞または非致死性の脳卒中の発症です。
secondary outcomeは、primaryに加えて、心肺蘇生された、心不全を発症した、心カテをされた、が含まれるようになります。

結果に移ると、12705人集めてきて、3180人にエカードとクレストールを飲ませました。3181人はクレストールだけ、3176人がエカードだけ、3168人が両方共プラセボ、という感じでやっています。
これから先は、エカードとクレストールの両方とも内服した群と両方共プラセボの群を比較します。

年齢は65.7歳、46.2%が女性でした。血圧は138.1、LDL-choが127.8でした。やはり、普通なら投薬しない可能性が高い人々です。

お、けっこう服薬アドヒアランスはいいですね。8割以上の方が2年間飲んでいます。

治療効果としては、Fig 2に載っています。血圧は最長7年フォローしています。

かば:やっぱり血圧下がるんですね。ぱっと見、けっこう下がっているように見えますけど。

かわうそ:よくよく見てください。目盛りの単位がキモです。
まず、プラセボでも5mmHgくらい下がっています。内服群では、さらにそこから6mmHgさがるというわけです。

かば:y軸の目盛りに注意しないとですね。

かわうそ:でも、クレストールだと、LDL-choが30くらい減ります。たいしたものです。

ちなみに、このグラフ、5年までは横ばいなのに、そこから先にはさらに下がったりしているように見えます。油断していると、5年以上飲み続ければさらに効果が出てくるのか、とか刷り込まれてしまいそうです。

でも、よくみるとグラフの下に何人をフォローした結果なのか、という数字が載っています。ここに注目すると、実は5年以上フォローした人が少ないので、結果が変わってきているだけだと思われます。

かば:なるほど。

かわうそ:Table 2がアウトカムのまとめです。複合エンドポイントですが、個々のエンドポイントについても丁寧に件数の数字を出しています。偉い態度だなと思います。

かば:複合エンドポイントにしないと、イベント数が少なすぎて有意差がでにくいんでしょうね。

かわうそ:そう思います。デザイン的にも、低リスクの集団ですし。実際、心血管系が原因の死亡については、有意差がでていません。非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中については有意差が出ているようですが。
とりあえず、primary outcomeについては有意差があったということなんですが…。

かば:5年間フォローしたとき、157人にそういうイベントが起きるところが、降圧剤と高コレステロール薬を飲むと113人まで減らせられた、ということですね。3000人が飲んで30人くらいに効果が出たわけですね。

かわうそ:この結果をどう感じたらいいんでしょうかね。もう少し詳しく数字を追ってみると、コンバインドセラピー群では113人、3.6%にイベントが起きています。ダブルプラセボコントロール群では、157人、5.0%にイベントが起きています。HRが0.71で95%信頼区間が056-0.90、p<0.005です。
どう思います?「すごい、ぜひとも処方するべき」ってな感じで、広告されるんでしょうかね?

かば:製薬会社からすると、イベント発症率を3割近く減らした、とか言われますね。

かわうそ:absolute difference、つまり、5.0%と3.6%の単純な差なんですが、それもきちんと書いてありますよね。1.4%減らしました、といわれると、ほんと大したことない違いですよ。
さらにNNT(number need to treat)を計算すると72でした。つまり、72人治療して、1人救えるというわけです。
普通は隠したくなる数字ですよね。ちゃんと出しているだけ、真摯な態度を感じます。

かば:これを多いと見るか少ないと見るか。あと、医療経済的にどうなのか。
でも、COPDの薬よりはNNT小さいですよね。効いている気がします。

かわうそ:ていうか、COPDとかOSAの論文でこういうのを出しているところを見たことがないンですけど。
循環器科はこういう研究で呼吸器科よりかなり先を行っていますね。

かば:あと、結局スタチンがよく効いているみたいです。

かわうそ:よくご存知で。さっきも言ったように、この号では降圧剤とプラセボ、高脂血症治薬とプラセボでも同じような検討をしています。
で、高脂血症治療薬とプラセボ群の比較だけが、有意差がでました。
ということで、この3つの論文を読んだ感想として、クレストールの力がすごいな、という見方もあります。NNT=72ですけど。

かば:NNT=72って、でもけっこうすごくないですか?心筋梗塞の予防と考えたら、処方するかもしれません。
もっと血圧とかコレステロールの高い人だと効果がいいかもしれませんし。

かわうそ:あ、そういう解析もしていました。集められた人の中で、それでも血圧高めの人で解析すると有意差が出たといっています。

かば:きれいな結果ですよね。すごいですね。

かわうそ:実はYusufっていう人が、この3つの論文のうち2つを書いています。

かば:アジア系もが入っていますね。

かわうそ:これまでの研究ではやっぱり白人対象のものが多かったので、人種差を除外するためにいろいろ入れた、とどこかに記載ありました。

でも、私が仮に患者としてこの情報を得た時、やっぱり飲まないと思います。
筋痛・めまいだとかの副作用もある程度ありますし、それ以上に恩恵を受けるのが何十人に一人と言われると…。

かば:昔はもっとスタチン神話すごかったですよね。肺炎にだせ、とかCOPDにも出せ、とか。CRPが0でも、抗炎症作用があるとか。

かわうそ:今はどうなってるんでしょうね。

2015年12月10日

肺エコーをしよう!?

私はまだ、なかなか実臨床では手が出せていませんが、肺エコーについてです。

Critical Care Ultrasonography Differentiates ARDS, Pulmonary Edema, and Other Causes in the Early Course of Acute Hypoxemic Respiratory Failure.
Chest. 2015 Oct 1;148(4):912-8.
Sekiguchi H, Schenck LA, Horie R, Suzuki J, Lee EH, McMenomy BP, Chen TE, Lekah A, Mankad SV, Gajic O.

2015年11月18日

かわうそ:みなさんがお好きな(?)肺エコーです。
ここに来て教えていただいたおかげで、私も気胸では何とか使えるようになりました。

この論文は、急性の低酸素性の呼吸不全で救急外来に来られた方の鑑別を超音波でやろうというものです。
心不全とARDSとそれ以外の疾患を分けるために必要なエコーの所見は?というものを調べたものです。
134人というのでけっこう大量の症例を集めています。

イントロに入ります。
まず、急性低酸素性呼吸不全(AHRF)の原因として、いろいろなものがあげられています。ALSのような肺に問題のないものもありますし、窒息のような気道閉塞もありますし、心不全やARDSのような心原性以外のpulmonary edemaがあります。血管系もあります。肺塞栓とかですよね。
これらを救急外来でエコーで簡便に鑑別できれば、診療上有用であろうという前提で始まっています。

方法に入ります。
血ガスが重要になりますよね。P/F ratio<300でAHRFを決めていますし。だから、血ガスと心エコーの間隔を6時間以内ときっちりと決めています。
一人に対して、左右4箇所ずつ、計8箇所で肺エコーをやっています。なかなか味のある絵が載っていますよね。後で出てきますが、結局いろいろ見た中で、B lineだけが有用であったとのことです。B lineっていうのは、私はよくわかっていないのですが。気胸しかまだわからないので。

かば:B lineっていうのは、縦にラインがでるやつですよね。間質性病変や肺胞性病変の存在を見ているはずです。

かわうそ:その他、胸水を見たりしていますし、普通の心エコーもやっています。左室の収縮能だとか、拡張能とか。下大静脈も評価しています。ここにはあまり詳しく書いていないんです。アペンディックスに載せてあるようですが、手に入れていません。
さらに、これらを10分以内に行うとしています。かっこいいですね。
結果です。9ヶ月で241人の患者がICUに入りました。AHRFの定義を満たしたのが134人ということになっています。

かば:すごいなあ。

かわうそ:Table 1は患者背景ですね。44%が心原性、31%がARDS、残りの25%が様々な疾患ということになっています。ちなみに、心不全とARDSの両方の要素を持つ人は、心不全に含まれています。
診断については、別々のDrが診断して、一応似たようなものになったとのことです(kバリュー=0.77)。
ARDSの原因は肺炎が最も多かったとのことです。様々な疾患にどういうものがあったかというと、一番多かったのが、肺炎、以下、肺梗塞、COPD増悪、肺塞栓、気胸、悪性胸水と続きます。「様々な疾患」にはどのようなものがあったかというと、片側の肺炎が半分くらい、あとは肺梗塞、COPD増悪、気胸、悪性胸水などでした。

解析については、まず、心原性肺水腫+ARDSというグループととその他の様々な疾患を区別するエコー所見をまず調べています。その他様々な疾患というのは、どうやら片肺の疾患が主なもののようですね。

いろいろ解析した結果、まずは肺エコーでB lineがさきほどの8個の領域のうち、いくつで認められるか、というものです。結局、B lineが3か所以上で見えた場合は、心原性+ARDS群に分類される、と。Figure 4のフローチャートにわかりやすくのっています。

引き続き、心原性肺水腫とARDSの鑑別を調べてみると、多変量解析で残ったものが、左胸水があること、中等度以上の左室の収縮能低下があること、下大静脈の直径が23mm以上であるということが、心原性肺水腫(+ARDS)群に含まれる因子ということがわかりました。
あと、弁膜症とか右心不全とかは、いっさいこの診断には寄与しなかったということです。
スコアリングなども気合入れて作ってありますよ。Fig 4に載っています。

かば:私、EFは測れませんけど…。

かわうそ:私もです。だいたい左室の壁運動がしっかりあるという程度でいいのではないでしょうか?

この論文でも、実は拡張能の指標もしっかりととろうとしていたようなのですが、結局一部でしか測定できずうまく解析できなかった、と著者が嘆いているんです。
それでも、E/e'がけっこう鑑別に有用かもしれないと書いています。

ただですね、こうしてみると「やっぱりエコーはすごい、やってみよう」とお思いになるかもしれません。私もそう思いました。…、Discussionを読むまでは。

かば:ふふっ。

かわうそ:けっこう台無しになるようなことをポロッと書いているあたり、非常に好感が持てますよね。今回検討した、鑑別に有用な所見について述べてあります。
まず、B lineについては、理論的に言えば、聴診でraleが聞こえることに相当するはずです。
そして、左胸水があることは、打診でわかるはずです。
さらに、左室収縮能の低下があるならⅢ音が聞こえるはずです。
最後に、IVCの拡張は頸静脈怒張で代用できるはずです。
というわけで、エコーと身体所見のどちらが感度が高いのか、という問題になってきそうです。
ちょっとテンション下がりますね。あくまで身体所見の確認というスタンスでエコーをするというのは、エコーをするハードルが下ると言えるかもしれませんが。

かば:ここであえて身体所見に立ち戻るっていうのがすごいですね。

かわうそ:しかし、そんなに心不全とARDSの鑑別でもめることはありますか?
循環器科でエコーされて、心機能は大丈夫です、と言われたとしても、B lineが見えて、左胸水があったら心原性だと言ってもいいということですかね?

きりん:まあ、もともと「心原性肺水腫+ARDS」群と「心原性肺水腫のないARDS」群という、区別しているのかどうかわからない分け方ですからね。

かわうそ:そうですね。区別できていないですよね。たまたまみつけて、喜び勇んで読み始めた割には、ちょっともやもやする論文でした。
でも、久しぶりにケースレポートとか総説でなくて原著論文を読みましたよ。

きりん:題名とAbstractは罪ですね。騙されますよね。

かわうそ:肺エコーをしよう!と意気込んで読んでみたら、結局身体所見でよくない?とか言われてますし。

かば:映画の予告編が一番おもしろかったような感じですね。
でも、読んでいなかったのでありがとうございました。B lineっていうのも久々です。

かわうそ:これがあると肺の浸潤影と関係するんですね。

きりん:小葉間隔壁が肺の表面では7mm間隔なので、縦のラインが7mm間隔で見えるということ、3本以上見えるというのがB lineです。これがあると肺水腫とか、あと間質性肺炎の存在が疑われます。

かわうそ:そんなミリメートルのオーダーで戦うんですか…。やってみたいとは思いますが…。

かば:エコーの研究って、たいてい術者の熟練度に左右される、というリミテーションが付きますよね。

かわうそ:エコーあてて、きちんと所見を書いて練習していくしかないですよね。


2015年10月29日

たこつぼ心筋症まとめ

Clinical Features and Outcomes of Takotsubo (Stress) Cardiomyopathy.
N Engl J Med. 2015 Sep 3;373(10):929-38.
Templin C1, Ghadri JR, Diekmann J, Napp LC, Bataiosu DR, Jaguszewski M, Cammann VL, Sarcon A, Geyer V, Neumann CA, Seifert B, Hellermann J, Schwyzer M, Eisenhardt K, Jenewein J, Franke J, Katus HA, Burgdorf C, Schunkert H, Moeller C, Thiele H, Bauersachs J, Tschöpe C, Schultheiss HP, Laney CA, Rajan L, Michels G, Pfister R, Ukena C, Böhm M, Erbel R, Cuneo A, Kuck KH, Jacobshagen C, Hasenfuss G, Karakas M, Koenig W, Rottbauer W, Said SM, Braun-Dullaeus RC, Cuculi F, Banning A, Fischer TA, Vasankari T, Airaksinen KE, Fijalkowski M, Rynkiewicz A, Pawlak M, Opolski G, Dworakowski R, MacCarthy P, Kaiser C, Osswald S, Galiuto L, Crea F, Dichtl W, Franz WM, Empen K, Felix SB, Delmas C, Lairez O, Erne P, Bax JJ, Ford I, Ruschitzka F, Prasad A, Lüscher TF.

2015年9月15日

きりん:NEJMのタコツボ心筋症の報告です。

かわうそ:これは題名見て興味ひかれてた論文です。でも、循環器科の素養に乏しいので敬遠してました。助かります。

きりん:タコツボ心筋症は、1990年から知られた疾患なのですが、その自然経過、管理、そしてアウトカムなどはまだよくわかっていないらしいです。というわけで、ヨーロッパとアメリカの26もの施設の協力を得て、たこつぼ心筋症の研究をしようじゃないか、というのの報告です。インターナショナルたこつぼレジストリーというかっこいい名前の(?)コホートがあるんです。

かわうそ:名前がいいですね。タコツボってのがやっぱりいい味出してますよね。

きりん:1750人の患者を集めていますね。それと、急性冠動脈疾患(ACS)の患者で、年齢・性別を合わせたコホートと比較しています。
たこつぼ心筋症の診断の仕方が書いてあります。まず、1つの冠動脈の灌流領域では説明できないような左室の壁運動の異常があります。もちろん冠動脈の閉塞だったりプラークの破綻だったりが、アンギオで証明されません。新たな心電図の異常やトロポニン上昇は、ACSと同じようにあります。褐色細胞腫や心筋炎がないのが前提です。
ちょっとややこしいのが、これらの基準の例外として、冠動脈疾患が併存してもよい、というのがあるみたいです。その場合、1つの冠動脈の灌流領域で説明のつく壁運動異常はあるんでしょうが、それ以外の壁運動異常は、たこつぼ心筋症の存在を考えないと説明できない、ということなのだと理解しています。実際、あとでも出てきますが、たこつぼ心筋症の1割くらいでは冠動脈の異常があったとされているみたいなんです。

かわうそ:たまたま合併したということなんでしょうかね。

きりん:Figure 1がフローチャートです。1998年から2014年の間に、たこつぼ心筋症と診断された1750人が、30日後と、あとロングタームのアウトカムということで10年後まで(!)カプランマイヤーの解析に回されています。Matched cohortは、先ほどいったようにACSの455人と、それに合う455人が選ばれています。あと、この1750人もいろいろ除外されていますね。30日から先のフォローアップの情報がなかったり、処方の記録がはっきりしないとか、退院後の情報がないとか。
これは心筋梗塞なんかの研究でもよく使われているみたいですが、アウトカムは「major adverse cardiac and cerebrovascular events」ということで、たこつぼ心筋症の再発、心筋梗塞の発症、脳梗塞、一過性虚血発作、全死亡などを含んだイベントです。
この論文の言いたいことは、おそらくほとんどこのTable 1に凝縮されているんだと思います。ACSのmatched cohortと比較すると、たこつぼ心筋症は、胸痛の訴えは少なくて(73.5%対89.6%)、呼吸困難の訴えが多かった(47.4%対35.3%)ということになっています。この人達がすごく言いたかったことは、左室の駆出率が低く(40.7%対51.5%)、左室のend diastolic pressureが高目になっている(22.1%対20.1%)ということだと思います。本文にも、EFが落ちている人がたこつぼ心筋症の8割以上で見られていて、その平均値が40%だということが書いてあります。一方、ACSだと5割位の人でしかEFが落ちていないということになります。
合併症については、たこつぼ心筋症の人でも、2割位で冠動脈疾患がありました。ACSでは当然100%です。続いて、Neurologic or psychiatric disorderですが、やっぱりこういう疾患を持っている人は、たこつぼ心筋症の方が多いですね。あと、いずれも急性期の疾患よりも、過去または慢性期の疾患を持っている方が、たこつぼ心筋症に罹患しやすいみたいです。

かわうそ:この項目だけ、たこつぼ心筋症のTotal cohortとMatched cohortでえらい差がありますね…。どうなってるんでしょう?
あと、NeurologicとPsychiatricを一緒の項目で論じたりすることもあるんですね。ちょっと違和感ありますけど。

かば:Neurologicは脳血管障害との関係で、Psychiatricの方はストレスとの関係ですかね。

きりん:心臓と脳の神経系の関係があるようなことがどこかに書いてありました。
タコツボ心筋症ではカテコラミンの過剰が原因のようなので、頭の病気との関係がいわれています。頭の手術とかクモ膜下出血後ですごくストレスがかかるときの発症が有名ですよね。

かば:そういえば、これは国試ででますよね。

きりん:Psychiatricに隠れていますが、Neurologicもけっこう重要な因子だということが今回の研究ではっきりした、ということでしょうか。やっぱり原因不明っていうのもある程度ありますが。あと、そうはいうものの精神的なトリガーより身体的なトリガーの方がきっかけとしては多いんです(27.7%対36.0%)。
アウトカムについては、ショック状態や死亡については両群で差がないみたいです。
とにかく、患者背景がこのように違うこと、EFがたこつぼ心筋症で重症の人が多いということがわかった、ということが、この研究で言いたかったことのほとんどだと思います。

かわうそ:なるほどねぇ。

きりん:Fig 2は分類の図です。よく見るApical Typeの他、Midveentricular TypeとかBasal Typeとか、Focal Typeとかあります。全然知りませんでした。Focal typeとか、心室瘤とどう違うんでしょうか。エコーで見分けられるのか不安ですが、8割はApical typeなので安心です。
Fig 3はLong term outcomeのカプランマイヤー曲線です。さっきも触れたmajor adverse cardiac and cerebrovascular eventsについてですが、なんと10年経つと5割位でイベントが起きているようです。死亡でみても2割くらいで起きています。たこつぼ心筋症のアウトカムは軽視されがちですけど、ACSと同じくらい慎重に考えるべきなんだと筆者は訴えています。たこつぼだからってなめないでよ、ってことでしょう。
あと、1年後の生存でみると、ACEIとかARBを使うと改善されています。βブロッカーでは、そうではなかったようです。

かば:たこつぼ心筋症は、戻れば心不全にならないからβブロッカーはいらないってことなのかもしれないですね。

きりん:βブロッカーで再発は抑制されるのですが、予後は証明できなかったようです。

かば:10年なら差が出ても、1年では差はでないかもしれないですね。やっぱりたこつぼ心筋症は、最初にすごく心機能が落ちて、そこで死亡なんかもあるかもしれませんが、そこを乗り切ればあとは割りと予後がいい気がします。
あと、普通のACSのカプランマイヤーを横に並べて欲しいですけどね。それと比較しないと、たこつぼ心筋症の怖さがわかりにくいです。
あと、これだけの大規模研究の結果を、独り占めした感がちょっとずるいですよね。横断と縦断と比較で出せません?サブグループ解析もありますし。NEJMだから仕方ないかもしれないですけど。

かわうそ:ずらずらっと人の名前がならんでますけど、日本人いないですね。

きりん:たこつぼレジストリーっていう名前なんですけど、ヨーロッパです。オーストリア、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スイス、イギリスそしてアメリカです。

かば:けっこうたこつぼ心筋症って経験しますよね。喘息発作に合併したり、術後に発症したりとか。

かわうそ:診断は心カテが必要ってことですよね。エコーでたこつぼ心筋症と診断できても。

かば:エコーだけでは診断できないと高らかに宣言されています。あと、冠動脈疾患の合併もありますからね。

きりん:というわけでタコツボの疫学でした。

かば・かわうそ:ありがとうございました。


2015年9月17日

最近うわさのREVERT trial その2

Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial.
Appelboam A, Reuben A, Mann C, Gagg J, Ewings P, Barton A, Lobban T, Dayer M, Vickery J, Benger J; REVERT trial collaborators.
Lancet. 2015 Aug 24. pii: S0140-6736(15)61485-4.

2015年8月28日

その2

その1から続き

かば:図表に戻ると、Table1がBaselineで、ここは差がありませんね。肺炎、COPD、心疾患など、それなりに基礎疾患あります。Table 2がアウトカムです。Primary outcomeがValsalva法で戻った人、Secondary outcomeが結局アデノシン静注を必要とした人になっています。どちらにしても、Modifiedの方法がよかったようです。その他の成績も軒並みModifiedがよかったと言っています。
ただ、帰宅出来た症例、救急外来滞在時間については差がなかったようです。あと、副作用は有意差がないのですが、人数的には少し多かったようです。Table 2によると脈が増える、心電図異常がある、腰痛がある、頭痛、胸痛、チアノーゼなどがあったみたいです。どれもそれほど重症ではないですね。
あとは心電図の所見について書かれています。
看護師さんに足をどのタイミングであげるのかとかを説明するのが難しいように思いますが、共有できるのなら負担は少ないと思うので、やってみたらいいと思います。

かわうそ:最初にValsalvaさんが記載した方法が、足をあげるやり方なんですか?

かば:ネットで調べたところ、最初は「深呼吸のあと、声帯を閉じたまま息を吐こうとする方法」みたいです。座位より臥位の方がよいとか言われています。

かわうそ:頚動脈洞マッサージっていうのもありませんでした?

かば:あと、眼球マッサージとかもありますね。副交換刺激の方法です。でも、血栓が飛ぶとか、網膜剥離の危険があるので、やりにくいです。
あと、顔を水につけるというのもあるみたいです。

かわうそ:ちなみに、SVTは心電図とったら機械が教えてくれますか?

かば:でないですよ。自分で診断しないといけないです。私も自分で読めない可能性大です(*_*)

かわうそ:でないんですか!?その診断に自信がない人はどうすればよいのでしょうか?

きりん:またまたお二人ともご冗談を…。
でもValsalva手技に副作用がないのであれば、SVTと確信がなくても、Afとかでなければやってみたらよいのではないでしょうか?

かわうそ:なるほど、たしかに。

かば:Lancetっぽくて面白い論文ですね。さっきの動画も、ファーストオーサーっぽい人がすっごい嬉しそうにペラペラペラペラしゃべっています。

きりん:背景がACLSの勉強のビデオと全く同じだなって思ってみていました。我ながらマニアックな見方だと思います。

かば:REVERT trialっていう名前もかっこいいですよね。

かわうそ:なぜREVERTなんですか?Rはどこからきてるんですか?RandomizedのR?

かば:唐突にREVERTって出てきてます。たしかに何の略語かわからないし、ちょっとひどいですね。
でも、この人達はたぶん「REVERT trialによると、Valsalva手技はこうした方がいい!」って言いたいがために、こうやって試験に名前をわざわざ付けたんですよ。

きりん:そうですね。たぶん、こういう豆知識みたいなのが好きな先生が研修医とかに、「REVERT trialって知ってる?」とか言うってるんですよ。

かば:その場面、すっごく想像できます。循環器科は何かかっこいい名前の研究が多い印象ありますよね。

かわうそ:たしかに、かしこい先生はちゃんと試験の名前までおぼえていますよね…。かしこいのかマニアックなのか知りませんけど。
肺癌の試験は、数字の羅列なことがありますからそれよりはいいですね。

かば:こういう昔ながらの治療法を見直すみたいなのはいいですよね。

かわうそ:でも、救急の場で、わざわざめんどくさい同意書を取って研究するっていうのは、なかなかできることではないですよね。すごいです。

かば:やっぱりリサーチナースがいるっていうのが大きい気がします。
あと、SVTは、直接命にかかわらないのが目の付け所がいいとこですよね。

きりん:患者さんも若いですし、理解もよさそうですよね。


2015年9月14日

最近うわさのREVERT trial その1

Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial.
Appelboam A, Reuben A, Mann C, Gagg J, Ewings P, Barton A, Lobban T, Dayer M, Vickery J, Benger J; REVERT trial collaborators.
Lancet. 2015 Aug 24. pii: S0140-6736(15)61485-4.

2015年8月28日

その1

かば:今ちょっと話題になっている論文です。
いわゆる上室性頻拍の時のValsalva手技の成功率っていうのがあんまり高くない、5-20%くらいなので、何とかそれを上げる方法はないか、という研究です。上室性頻拍の治療といったら、アデノシンの静注とかもよく言われていますけど、あれってすごく気持ちが悪いというか。やっぱり一瞬脈がとまるので、やってるこっち側も嫌だし、患者さんもすごい不快らしいです。

かわうそ:そうですね。一回救急でやったことありますが、こわいですね。

かば:できれば、アデノシンとか使う前に何とかできたらいいなっていうのがあります。Valsalva手技は、臥位でやるのがいいとか、足をあげるといいとかはすでに言われていましたが、それを実際にちゃんとRCTでやってみたという論文です。AfとかAFとかは除外した上で、息を「フンッ」と止めるだけの人と、修正したValsalva法の人に分けています。
やり方がネットに動画で出ています(http://www.thelancet.com/cms/attachment/2035488647/2051082005/mmc2.mp4)。45度くらいで寝ている人に、圧力計でちゃんと40mmHgの強さを測って、15秒間息こらえさせて、終わったら二人がかりで足をあげて倒すんです。これがmodified Valsalva法で、これをやると改善率が抜群によくなったという報告です。普通のやり方だと戻ったのが17%だったのに対して、今のような、フラットにして足をあげるというのを最後につける方法だと、43%で半分近くが落ち着いています。ひっくり返すだけなので、特に副作用もなく、シンプルだしお金もかからないのでいいんじゃないですかね、という論文でした。

かわうそ:Valsalva法の理屈ってそもそもどういうものなんでしたっけ?(>_<)ゞ

かば:息こらえで胸腔内圧を上げて、静脈還流量を減らします。すると、一回拍出量が低下して血圧とかは一過性に下り、頻脈になります。
そのあと、息こらえを開放すると、一気に静脈血が心臓に戻ってきて、1回拍出量が増大して、頚動脈洞圧が上昇、迷走神経刺激で反射的に徐脈を引き起こします。
Modified法では、最初座位で息こらえすることで静脈還流を減らしておいて、息こらえ開放後に足をあげることで、より静脈還流量を増やそうという考えなんですね。

かわうそ:1回しかやっちゃだめなんですか。

かば:2回までいいみたいです。それ以上ならアデノシンやcardioversionになっていました。
ただそれだけなんですけど、すごいきれいにやっていますし、イギリスのERのDrが160人くらい関わっています。参加する人には今のビデオを見せて、やりかたを教えて練習しているようです。あと、リサーチナースが横にいて記録を取っているようです。SVTの定義もちゃんと載っています。inclusion criteria、exclusion criteriaもしっかりと記載しています。ランダム化は、完全な二重盲検というわけにはいかないんですが、どちらの群になるかはきちんと管理されています。
けっこう親切なことに、参加者の患者さんが外でまた発作に襲われた時のことも考えているんです。10mlのシリンジを渡していて、細い方を加えて息で内筒を押し出すように吹かせます。そうすると大体40mmHgになるみたいです。これも先ほどの動画にあります。

かわうそ:それで息こらえになるんですね。おもしろいですね。呼吸リハの患者さんに持たせてもいいかもですね。

かば:さらに、不整脈協会のチャリティーなんかも紹介していて、手厚いです。
1170人くらいエントリーされていますが、色々省かれていて、433人がランダム化されました。例えば、手技をする前に自発的に不整脈でなくなってしまった人とかです。ちょっと面白いのが、20人が登録されていないんですが、その理由が「救急外来が忙しすぎた」となっています。

きりん・かわうそ:ははは。

かば:あと、同意書をとったけど無くした、とかいうのも書いてあって、ここまで細かく記載しているのか、と感心します。

かわうそ:すごいですね。自分の研究ではここまでうまく書けなかったんですよね…。

かば:ここは意外に自分ですると難しいですよね。

その2へ続く