2015年7月21日

成人気管支拡張症の管理 その1

Management of bronchiectasis in adults.
Chalmers JD, Aliberti S, Blasi F.
Eur Respir J. 2015 May;45(5):1446-62.

2015年7月8日

その1

かわうそ:今回はちょっと役に立つ文献を読みたいなという期待を込めて選んでみました。

嚢胞性線維症以外の気管支拡張症の管理についての総説です。すぐに臨床に役立つものではなかったのですが、興味深いところはいくつかありました。

まず、アブストラクトのところに、気管支拡張症はいろいろな疾患が進行して最後にたどり着くものってことが書いてあります。つまり、感染、遺伝性、自己免疫、アレルギー、COPDなどが基礎にあるかなりヘテロジーニアスな疾患で、経過が様々ということです。これだけ雑多だと、なかなか研究するのも難しいんだろうな、って思いました。もともとはorphan disease、まれな疾患として無視されていたのですが、最近陽の目を浴びつつあるようですね。

治療の中心としては、airway mucus clearance、eradication and prevention airway bacterial colonisation、reducing airway inflamationとなっていて、肺機能だとかQOLを改善すること、となっています。このあたり、具体的にどんな治療がいいのか、というところを教えてくれると期待して読みすすめましたが…。

かば:もともと日本でしか認識されてなかったんですよね。マクロライド治療がいいんだとか。

かわうそ:あとでもマクロライド治療のRCTについて触れられているんですが、残念ながら日本からの報告ではないんですよね。ニュージーランド、オーストラリア、オランダでされています。

かば:日本ではじめられたのに、RCTは先をこされちゃった、と。

きりん:マクロライド研究会とかあるんですけどね。

かわうそ:そんなのあるんですか?知らなかったです。
頻度とかもあまりはっきりしたことはわからないようですが、アメリカでは52/100000人くらいと書いてあります。本物の気管支拡張症は、かなり予後が悪いものと認識されているようで、特に気道感染の頻度がけっこうえげつないです。年1.8-3回とか、2年で3割が増悪を経験するとか報告されています。COPDよりも断然多いですね。

かば:たしかに気管支拡張の方は、定期受診以外の受診が多い印象はありますよね。

かわうそ:予後も厳しく、半数が呼吸器疾患が原因で亡くなるらしいです。本物の気管支拡張はシビアですね。今のところ外来で診てるのは、CT画像で異常なだけで動きのない方ばっかりなので、ちょっと油断してました。一度病歴見直してみようと思います。
続いて病理についてつらつら述べられています。気管支拡張症で難しいところは、好中球炎症が原因であるというところみたいで、それを抑える薬がないのが、治療を難しくしているというわけみたいですね。

かば:好中球炎症ってところはCOPDに似てますね。

かわうそ:実際COPDにも新しくそういう好中球炎症を抑えるような薬ができつつあるみたいなので、気管支拡張症にも使われるようになるのかもしれません。でも、気管支拡張症の原因が様々である以上、ひっくるめて検討してしまうと、効果なし、っていわれてしまわないか心配です。ヘテロな疾患の中でも、比較的機序が同じそうな症例を集めたほうがいいと思うんですが、まれな疾患というところで集めるハードルが高くなりますし。
最近、体内の細菌叢を、培養でなくゲノムで研究できるようになったというところも、期待できるところです。個人的にはけっこう注目してる分野です。これまで無菌と思われていた肺内も、けっこういろいろ住み着いてて、その変化が疾患に影響しているのではないかという話ですね。
Figureに気管支拡張症の病理が治療方法にからめて描いてあります。構造が壊れて、痰がたまり、細菌が住み着き、炎症が惹起される。また構造が壊れ、という悪循環が続いていく、ということみたいです。それぞれの段階での治療法という触れ込みでいくつか書いてありますが、どうなんでしょうか。あんまり有効に思われないんですが。

かば・きりん:ふふふ。

かわうそ:治療は一般的には、まずは禁煙とワクチンを薦めるというとこです。で、基礎疾患についての検査をするべきらしいです。ABPA、COPD、NTM、CF、喘息、GERDなどです。気管支拡張の原因で、NTMとか細菌感染以外はあんまり意識したことありませんでしたので反省しました。で、ここがよくわからないんですが、Immunoglobulinとか、ワクチンに対する特異的抗体反応を調べるように書いてあるんですよね。

かば:COPDで増悪するひとは、免疫反応がにぶくなる、っていうのがあるんです。それと似たような感じで、免疫反応を調べて増悪しやすい群を特定するっていう意図があるんではないでしょうか。

かわうそ:残念ながら、しらべろって書いてあるだけで、亢進していてどうか、減弱しているからなんなのかは書いてないんですよね。

きりん:BTSには気管支拡張症のガイドラインていうのがあるんですね。

かわうそ:そうみたいですが、ここまで調べてないです。すいません。
(後日調べたところ、Thoraxみたいな形式のガイドラインがフリーで利用できました。そのうち読んでみます。)

その2に続きます。