京都GIMカンファレンス
2015年7月31日
その1
きりん:今回はかば先生は夏休みです。
また、「診断力強化トレーニング」からです。京都GIMカンファレンス編集です。いろいろ有名な病院の先生が執筆されています。
かわうそ:これって、外部から参加してもいいんでしょうかね?恐いですけど、機会があれば行ってみたいですね。
きりん:本に書いてあるところによると、毎月洛和会音羽病院でやっているみたいです。老若男女、勤務医開業医だれにでも門戸を開いているとかネットに書いてありました。
かわうそ:我々がここでやいやい言っているのは、その場では的はずれだったり議論され尽くしたような指摘なのかももしれないですね。
きりん:もしかしたらプレゼンターが答えを言う前に、参加者で診断がついていたりとか?
さて、今日の症例は27歳の特に既往のない男性です。側胸部痛と背部痛です。10月の半ばから倦怠感があって、咽頭痛と頭痛を伴う40度の発熱を認めたため、近医を受診、シプロフロキサシンを処方され、一旦良くなったということです。よくあるパターンですね。一旦解熱したんですけど、1週間位たってまた38度の発熱が出て胸背部痛が出現したので、入院となったということです。
かわうそ:27歳が発熱でいきなり入院になったんですね。
きりん:病歴をまとめると、緩徐発症で、高熱ですが悪寒戦慄がなくって、寝汗もなくって、この時は頭痛も腹痛も嘔吐もなしと。温泉・渡航歴なくって、周囲に同様の症状なくって、でも深呼吸で胸が痛くって、咳と唾液様の痰があって、呼吸困難があると。大切なのは、嚥下時と咽頭痛、側頚部痛があるということで、なんか、喉と肺のあたりが怪しいなって思います。それと食欲が落ちているということです。
既往歴は特になくて、アレルギーもなくて、ビール飲んでいて、喫煙は少し多いですね。1日2箱を10年、てことは17歳から吸っていたのかってかんじですね。
かわうそ:吸ってたんでしょうねぇ。
きりん:で、シプロフロキサシンを6日間内服したと。
かわうそ:こういう時にいつも思うんですけど、量がどうだったのかっていう情報が重要じゃないですか?きちんと処方されていれば、抗生剤をきちんと出していたけど効かないから感染症は否定的なんじゃないか、とか考えられそうですが、100mg3錠分3なら話がややこしくなりますよね。実際は感染症だけど、抗生剤が効いていないという可能性も考えないといけないというか。
きりん:感染症診療の一番基本ですよね。
レボフロキサシンも、我々なら500mg分1に決まってますけど、油断してると100mgとか250mgとかだされてますよね。腎機能も別に悪くないのにな、とか思うことあります。
身体所見は、まあまあ大柄で、発熱してて、呼吸数が多くて、脈拍多くて、血圧は保たれていて、SPO2も保たれていると。
かわうそ:SPO2が92%はちょっと低くないですか?老人が92%なら、まあいっかとか考えちゃうかもしれないですけど。
きりん:さすがに27歳の若者には低いですね、たしかに。で、頭頸部では、眼瞼結膜に充血があって黄染はなし。なんか、目を真っ赤にして、はあはあいっている感じです。口腔内に虫歯が多く、咽頭発赤著明ですけど、扁桃腫大はない。頸部のリンパ節をさわっていくと、胸鎖乳突筋に沿って痛い痛いという。でもリンパ節はあんまり腫れていないみたいです。心音は異常なくって、聴診は右下肺と左側胸部に吸気終末にぼそぼそ音がすると。腹部は、右季肋部に圧痛があって…。ややこしくなってきましたね。筋性防御はないけど、肝叩打痛はあって、Murphy徴候はない。CVA叩打痛はないと。
首なのか、肺なのか、お腹なのか?という…。
かわうそ:おなかの所見も出てきたんですか…。もう手に負えないかも…。
きりん:検査結果は、カラーで印刷したのでわかりやすいです。
かわうそ:異常値が赤色になってますね。わざわざありがとうございます。
きりん:いえいえ。白血球が20000以上、好中球優位、血小板が極端に減っていて、凝固が延びている。血沈が0です。腎機能障害もあって、肝逸脱酵素は上昇してないのにビリルビンとALPが高い、と。さらに、Na低くて、CRPが20です。盛りだくさんです。
かわうそ:それはたしかに入院ですね。
きりん:ですね。胸部CTでは胸膜直下に多発浸潤影です。
ここで、あなたの診断は?とくるんです。
かわうそ:この時点で診断つけるんですか?(驚愕)
きりん:そうです(キッパリ)。
まとめると、高度の炎症所見があって、血小板が消費されてる。血沈が亢進してないのが変わってますけど。あと、肝機能が悪くないようなのにビリルビンが上がっている。敗血症のときってビリルビンちょっと高めになる印象があるので、そういうのかなって思います。
かわうそ:血栓・塞栓でこういうふうになったのかなって思わせますよね。
きりん:私は胸部CTをみて、これはって思いました。
かわうそ:reversed halo sign みたいですよね。ちょっと中が空洞っぽいというか。
きりん:私はこれみてseptic emboliって思いました。入院させますよね。
かわうそ:なるほど。自分は、結核はやっぱり除外できないなって思います。ニューキノロン出されちゃって、一瞬よくなったっていう経過もありますし。でも、喉が痛いとかはあまり聞かない訴えなんでおかしいかな…。
きりん:結核なら、もうちょっと赤沈がんばれよってなりますね。
かわうそ:それもそうですね。血沈ほとんど計らないんでいまいち感覚つかめませんが、さすがに0ってのはないですね。これは重要な情報そうですね。
きりん:きっと実際のカンファでもこんな感じでもっといろいろ鑑別診断があがってきて、「でも血沈あがってないからね」とかいう会話があったんじゃないですかね。
あとは、血管炎とか考えるべきでしょうか。
その2に続く