ただの悪性腫瘍と思ったら…、症例提示までです。
Malignant Transformation of Hymenolepis nana in a Human Host.
Malignant Transformation of Hymenolepis nana in a Human Host.
N Engl J Med. 2015 Nov 5;373(19):1845-52.
Muehlenbachs A, Bhatnagar J, Agudelo CA, Hidron A, Eberhard ML, Mathison BA, Frace MA, Ito A, Metcalfe MG, Rollin DC, Visvesvara GS, Pham CD, Jones TL, Greer PW, Vélez Hoyos A, Olson PD, Diazgranados LR, Zaki SR.
2015年12月16日
その1
かわうそ:かなり変わった症例です。難しくて消化不良なところもありますがご容赦ください。
41歳のHIV陽性患者です。あまり治療を受けていません。コンプライアンス不良です。倦怠感、発熱、咳、体重減少で受診されました。CD4とかウイルス量とかからすると、コントロール不良で免疫抑制のひどい状態だと思われます。便からH. nanaの卵とかが発見されています。これは条虫みたいです。
かば:ほう。
かわうそ:レントゲンとCTが載っています。わりと境界明瞭でくりっとした腫瘤が多発しています。
かば:すごいですね。
かわうそ:胸水もありますね。さらに、色々なところのリンパ節が腫脹しており、肝臓・副腎にも結節が指摘されています。
この時点で、条虫が検出されたからなのか、CDCに相談された上で、アルベンダゾール、ARTなどが始まっています。
リンパ節生検をした結果も引き続き載っています。細胞診では、変な形で、核が大きく、細胞質の少ない、つまりN/C比の大きい異型細胞があります。HE染色では、正常のリンパ節の構造が、不整形で、密に集まって巣状になった異型細胞の集まりで置き換わっています。また、この病変の周囲のところは、細胞が融合したような感じになっています。
かば:ふーん。
かわうそ:写真見ても私はあまりピンときませんでしたが、普通と比べて細胞が少し小さいことが、病理の先生にひっかかったみたいですね。細胞が5~6μmしかないみたいで、ヒトなら赤血球くらいの大きさとのことです。
あと、多核で巨大な細胞や細胞分裂像、血管リンパ管浸潤、壊死像などもあります。こういう単語はだいぶ悪性っぽいですね。電子顕微鏡写真も撮っています。リボソーム、ミトコンドリアがrichだそうです。
でも、そうこうしているうちに、だんだんとこの転移巣(?)が大きくなっているようです。ARTの他、アムホテリシンBなども使っているのですが、4ヶ月でどんどん容体も悪くなっています。結局、透析を拒否して亡くなっています。
…、という症例なのですが、さて、何を考えますか?
かば:へへっ。わかりませんけど。
その2へつづく