76歳男性、発熱、白血球減少と肺の浸潤影。
解答編です。
CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL. Case 37-2015. A 76-Year-Old Man with Fevers, Leukopenia, and Pulmonary Infiltrates.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2162-72.
Cho JL, McDermott S, Tsibris AM, Mark EJ.
その2
その1からつづき
かば:鑑別診断といっても、何も出てきませんよ…。これだけされてて全部違うんでしょ?
あ、でも結核は調べられていますね。QFTは陰性ですか‥。
膠原病も採血結果上は考えにくくなりますね。CRPは9.4でそれほど高くない…。肝機能も少し上がってるくらい。
かわうそ:そうですね。結局異常なのは、肺に影があって酸素化が悪いということくらいですね。
かば:あと、微妙に低たんぱくですね。
かわうそ:そうですけど、まあ、半年前から調子が悪いわけですからね。消耗しますよね。
状態が悪いんだろうな、ということはありますが、診断に結びつくかというと…。
培養もことごとく陰性なので困っちゃいますね。
かば:全然わからないです。
かわうそ:不明熱というカテゴリーで考えるしかないですよね。
つまり、悪性疾患と膠原病と感染症をまず考えましょう、というわけで考察されています。
さらに、この人の場合、やはり肺に異常があるということで、さらに追加の鑑別が出てきます。
かば:サルコイドーシスとかアスベストとか、鳥との接触からすると過敏性肺臓炎もちょっと考えないといけないかなってところですね。肺の影が目立ちますからね。
かわうそ:過敏性肺臓炎をすごく疑う陰影かというとどうなのかな、とも思いますけどね。
かば:あと、入院して環境変わっているし、ステロイド投与しても改善していないというところは、過敏性肺臓炎としてはちょっと合わないかもですね。
かわうそ:こうやって病歴から一つ一つ丁寧に詰めていっても、あんまり絞り込めません。
で、病理を見ていくんですが…。
かば:…、カンニングしちゃったんですけど…。
かわうそ:答えみちゃいました?そうですか…。じゃあ、このあたりは飛ばしましょう。
(´・ω・`)
病理の所見をEugene J. Mark先生が述べているんですけどね。
でも、ちょっと驚きじゃないですか?
かば:そうですね。でも意外に時々症例報告とか聞きますし、一応自分の患者で疑ったこともあります。
ステロイド投与していたりして免疫抑制のヒトには注意すべき処置って聞いていますけど。この症例では、そういう基礎疾患がないので、ちょっと意外ですね。
かわうそ:そうですか。時々いますか…。私は、国試の勉強で見たことがあるかもしれない、というレベルの認識でした。
かば:この処置はけっこうな頻度でやっているので、発症してもおかしくはないのかな、と思うんですよね。1%以下の発症率とありますね。
かわうそ:というわけで答えは、膀胱にBCGを注入したことによる、播種性のMycobacterium bovis感染でした。
かば:そういえば乾酪壊死ではなかったですね。Mycobacterium tuberculosisでないからでしょうか?
でも、抗結核薬治療でよくなったみたいで、よかったですね。
かわうそ:やっぱり結核の治療は大切ですね。
あと、過敏性肺臓炎の除外が難しいです。VATS標本では、肉芽腫はありますが、その中に菌は検出されていません。
鑑別診断でも、でも最後までもめていました。
かば:そういう過剰な反応の要素もありそうですけど。最終的には尿と血液から培養されていますしね。どちらの要素もあるということなのでしょうか。