結果です。なかなかおもしろい結果ですよね。
CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea.N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.
2016年9月27日
その2
その1からつづき
かわうそ:結果です。15325人あつめて、そのうち5844人が適格基準に当てはまりましたので、アプニアリンクによる検査をしています。3246人が中等症以上になりましたので、run-in periodの1週間、シャムCPAPをしています。2717人が忍容性があり研究に参加しました。これをCPAP+usual care群とusual care alone群に半分ずつにわけていますが、なんやかんやで減って、結局2687人が解析されました。
平均年齢は61歳、81%が男性、BMIが29、ODIは28でした。ESSは7.4でそれほど高くありません。途中で脱落したのは147人でした。フォローアップの中央機関は3.7年です。
Table 1が患者背景になります。
かば:フォローのレベルがハンパないですね。
かわうそ:お金かかってますよね。
アドヒアランスを見てみると、シャムCPAPの段階では5.2時間着用していましたが、1ヶ月後には4.4±2.2時間に減っています。12ヶ月後では3.5±2.4時間で、それ以降は安定していました。AHIは3.7まで減少しており、OSAがCPAPで良好にコントロールされていることを示唆していました。CPAP群1346人中566人、42%は1日あたり4時間以上着用しておりアドヒアランス良好でした。いろいろ批判もあるでしょうけど、実臨床の感覚からするとこれくらいなんじゃないでしょうか?usual care alone群の中でも、90人、6.7%がCPAPを試みられたようです。うち57人のみが治療を継続しているとのことでした。よいのでしょうか?
薬物治療、食事・喫煙などの生活習慣、BMIの推移などには両群間で差がありませんでした。
さて、プライマリーエンドポイントについてですが、全部で436人で心血管系のイベントが記録されています。うちわけをみると、CPAP群で229人、17.0%に対し、usual care alone群では207人、15.4%でした。HRは1.10で、むしろCPAPで治療したほうが、心血管イベントを起こしやすいという結果でした。もちろん、95%信頼区間が0.91-1.32、p値0.34ですので有意差はありませんでしたが。Table 2、Figure 2に書いてあります。
かわうそ:さすがにこれでは困りますので、サブグループ解析を追加していろいろ解析していますが、それでもCPAP群がよかったという結果はでませんでした。
参加者が多様ですので、中国とそれ以外、年齢、性別、OSAの重症度、BMI、日中の眠気の有無、心血管系疾患の既往、耐糖能障害など、いろいろやっています。
かば:涙ぐましい努力ですね。
かわうそ:ただ、CPAP治療のアドヒアランス良好群では、アドヒアランス不良群やusual care群とは異なっていました。
名前だけはおなじみ、で有名なプロペンシティースコアマッチングの結果を、アドヒアランス良好群で見てみましょう。CPAP群でアドヒアランス良好だった561人と、それとマッチするようなusual care alone群を集めてきて比較しました。この集団だと、CPAP群では86人(15.3%)でイベント発生に対してusual care alone群では98人(17.5%)でした。HRが0.80で95%CIが0.60-1.07、p=0.13でしたので、有意差はないもののCPAP治療が良好な結果につながりました。
カプランマイヤー曲線でもこの結果を確かめたとのことです。図はsupplementary appendixです。
かば:想定したよりアドヒアランスがよくなかったんですかね。アドヒアランス良好群がもっといたら、ちゃんと有意差がでたのかもしれませんね。
かわうそ:でも、これくらいギリギリの差しかないなら、苦しくめんどくさいCPAP治療をしたくないと患者さんが考えても、止められないですよ。
セカンダリーエンドポイントでも、ほとんど有意差がついていませんが、唯一、CPAP群で一過性脳虚血発作による入院が増えたという結果がでました。RR=2.09、95%CI=1.05-4.99、P=0.04です。また、アドヒアランス良好群とusual care郡のプロペンシティースコアマッチングの解析結果では、卒中や脳血管イベントの複合アウトカムでCPAP群がよいという結果がでていますが、これも多変量解析では消えてしまいました。
かば:なんならCPAP群の方が悪いですね。この結果って、あんまり話題になっていないように思いますけど。黙殺されてません?
かわうそ:そんな気がしています。
ただ、自覚症状だけはCPAP群で良好でした。Table 3に載っています。
ESSがCPAP群でベースラインとくらべて3減っています。HADSも良くなったと言っていますが、これが臨床的に意味のある違いなのかどうかは知りません。統計的に有意差があっても、臨床的には意味のない違いっていうのは、けっこうこっそりと論文に紛れ込んでいたりしますから、ちゃんと元論文にあたってみる必要があるんでしょう。やっていませんが。SF36もCPAPでよかったと書いてありますし、健康状態が悪くて仕事を休んだ日も少なくなっています。
でも、ESSで3の差って、CPAP治療の劇的な効果からすると、ちょっとしょぼくないですか?
かば:あまり自覚症状のない人を集めたらしいんで、しょうがないのでは?
かわうそ:なるほど。
まあ、ちょっとせつない結果の論文ですので、ここくらいは著者の主張を信じてあげたいと思います。
そういえば、血圧は経過中下がっていませんでした。これは既報と違うところです。
さて、睡眠時無呼吸で気になるのは交通事故との関係ですよね。これは、Table 4に書いてあります。
交通事故だとか、事故による外傷とか、ニアミスとか書いてあります。データのある人数が少ないからなのかもしれませんが、これも有意差ありませんでした。
タクシーとかトラックの運転手が、睡眠時無呼吸で受診したばあい、今後どうなるんでしょうね。何をやっても事故が減らないんですけど。
その3へつづく。
http://shirumoshiranumo.blogspot.com/2016/10/cpap_14.htmlCPAPは睡眠時無呼吸患者の心血管系イベントを抑制するか? その2