N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.
2016年9月27日
その3
その2からつづき
かわうそ:Discussionに入ります。
もう一度結果をまとめます。心血管疾患のある閉塞性睡眠時無呼吸患者における二次予防についての本研究では、通常の治療にCPAP治療を加えたことで、重症心疾患系イベントのリスクは減らせませんでした。ただし、CPAP治療は日中の眠気を減らし、HR-QOLやmoodを改善させるなど、自覚症状については良好な効果が期待できます。
私は知りませんでしたが、実はこの結果はそれほど目新しいものではないようです。
既報について述べられています。これまでに3つ、似たような目的でランダム化比較試験が行われています。
一つ目はスペインで行われた他施設試験で、心血管疾患のない閉塞性睡眠時無呼吸患者725人が対象でした。もう一つは、単施設で冠動脈疾患でカテーテル治療を受けたばかりの閉塞性睡眠時無呼吸患者224人を対象にしています。いずれも数年間のフォローアップで、心血管系の複合エンドポイントで有意差を示せませんでした。しかし、アドヒアランス良好な患者では良好なアウトカムが得られたというサブ解析がなされています。3つ目は最近の虚血性脳卒中140人で行われたもので、CPAP治療は、2年のフォローアップでevent free survialに影響しなかったというものです。
かば:ということは、CPAP治療で心血管系、脳血管系疾患には予防効果がないということは、専門家の間ではあたりまえだったということですか?私も知らなかったんですけど。
かわうそ:みたいです。これはちゃんと言ってほしかったですけどね…。
limitationとしては、この研究を始めた時期には参加した幾つかの地域では、睡眠時無呼吸の診断や治療が一般的ではなかったということがあります。ただし、研究施設に対して説明やモニターを十分にして、質の良い研究になるよう配慮したとのことで、試験の結果に影響するようには思えません。
また、今研究でのCPAPのアドヒアランスは平均で3.3時間/日であり、これが問題なのかもしれないといっています。
これくらいのアドヒアランスのレベルは、既報と同程度なんですが、心疾患系のアウトカムに影響するほど十分ではなかったのかもしれません。
かば:もっとアドヒアランス良好な場合に、はっきりとした治療効果があるかもしれないってことですか?
かわうそ:と、言いたいのだと思います。でも、サブグループ解析の結果を見ると、それもどうなんでしょうかね…。
また、効率的にリクルートして、他施設でのデータに矛盾がないようにするため、conventionalでstandardなPSG検査ではなく、単純なスクリーニングデバイスを用いて被験者を集めています。ここが問題なのかもしれません。
ただし、AppneaLinkは既報によると、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸を診断するのに信頼できるデバイスということですので、やはり結果にそれほど影響するとは思えませんね。
かば:中等症の閉塞性睡眠時無呼吸を含めたからでないですか?重症の人なら違うかも。
かわうそ:それも、いちおうサブグループ解析でやってます。
かば:重症だと人数が少なくなるので有意差が出にくいとか。だから、重症の人だけを2000人集めたら有意差がでるかも。 実臨床でも、中等症の人だとコンプライアンスが悪い印象ありますから。
かわうそ:かもしれませんが、それだけの規模で研究してようやく有意差がでるくらいの結果だとしたら、そんなに熱心に治療しないといけないのかって思いますけど。
かば:自覚症状が非常に改善した人を集めたらどうなんでしょうか?
かわうそ:なるほど。たしかに、そういうサブグループ解析はなかったように思いますが、経験上、睡眠が改善してばっちり眠気がとれたといって満足している人は、やっぱりアドヒアランスが良好な気がします。
だから、アドヒアランス良好群とそれほど異なるグループにはならないのではないでしょうか。
睡眠時無呼吸の人っていろいろいますからね。日中の眠気などの自覚症状がひどい人から、家族からいびきがひどいと言われるくらいで、自覚症状が全くない人とか。
自覚症状の強い人が、CPAPをつけて眠気が改善されたりすれば、モチベーションが上がってつけ続けてもらえることが多いですが、自覚症状のもともとない人は、マスクの不快感が強くて、続けられない人がいますよね。
そういう人につけ続けてもらうために、AHI低下の他に、将来の脳卒中や心筋梗塞を予防する目的でつけ続けてください、と言っていたんですけどね。こういう事実を知ってしまうと、これから情熱を持って診療続けられないですよ!
かば:そんなにCPAP治療に情熱もってやってたんですか?(;一_一)
その2からつづき
かわうそ:Discussionに入ります。
もう一度結果をまとめます。心血管疾患のある閉塞性睡眠時無呼吸患者における二次予防についての本研究では、通常の治療にCPAP治療を加えたことで、重症心疾患系イベントのリスクは減らせませんでした。ただし、CPAP治療は日中の眠気を減らし、HR-QOLやmoodを改善させるなど、自覚症状については良好な効果が期待できます。
私は知りませんでしたが、実はこの結果はそれほど目新しいものではないようです。
既報について述べられています。これまでに3つ、似たような目的でランダム化比較試験が行われています。
一つ目はスペインで行われた他施設試験で、心血管疾患のない閉塞性睡眠時無呼吸患者725人が対象でした。もう一つは、単施設で冠動脈疾患でカテーテル治療を受けたばかりの閉塞性睡眠時無呼吸患者224人を対象にしています。いずれも数年間のフォローアップで、心血管系の複合エンドポイントで有意差を示せませんでした。しかし、アドヒアランス良好な患者では良好なアウトカムが得られたというサブ解析がなされています。3つ目は最近の虚血性脳卒中140人で行われたもので、CPAP治療は、2年のフォローアップでevent free survialに影響しなかったというものです。
かば:ということは、CPAP治療で心血管系、脳血管系疾患には予防効果がないということは、専門家の間ではあたりまえだったということですか?私も知らなかったんですけど。
かわうそ:みたいです。これはちゃんと言ってほしかったですけどね…。
limitationとしては、この研究を始めた時期には参加した幾つかの地域では、睡眠時無呼吸の診断や治療が一般的ではなかったということがあります。ただし、研究施設に対して説明やモニターを十分にして、質の良い研究になるよう配慮したとのことで、試験の結果に影響するようには思えません。
また、今研究でのCPAPのアドヒアランスは平均で3.3時間/日であり、これが問題なのかもしれないといっています。
これくらいのアドヒアランスのレベルは、既報と同程度なんですが、心疾患系のアウトカムに影響するほど十分ではなかったのかもしれません。
かば:もっとアドヒアランス良好な場合に、はっきりとした治療効果があるかもしれないってことですか?
かわうそ:と、言いたいのだと思います。でも、サブグループ解析の結果を見ると、それもどうなんでしょうかね…。
また、効率的にリクルートして、他施設でのデータに矛盾がないようにするため、conventionalでstandardなPSG検査ではなく、単純なスクリーニングデバイスを用いて被験者を集めています。ここが問題なのかもしれません。
ただし、AppneaLinkは既報によると、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸を診断するのに信頼できるデバイスということですので、やはり結果にそれほど影響するとは思えませんね。
かば:中等症の閉塞性睡眠時無呼吸を含めたからでないですか?重症の人なら違うかも。
かわうそ:それも、いちおうサブグループ解析でやってます。
かば:重症だと人数が少なくなるので有意差が出にくいとか。だから、重症の人だけを2000人集めたら有意差がでるかも。 実臨床でも、中等症の人だとコンプライアンスが悪い印象ありますから。
かわうそ:かもしれませんが、それだけの規模で研究してようやく有意差がでるくらいの結果だとしたら、そんなに熱心に治療しないといけないのかって思いますけど。
かば:自覚症状が非常に改善した人を集めたらどうなんでしょうか?
かわうそ:なるほど。たしかに、そういうサブグループ解析はなかったように思いますが、経験上、睡眠が改善してばっちり眠気がとれたといって満足している人は、やっぱりアドヒアランスが良好な気がします。
だから、アドヒアランス良好群とそれほど異なるグループにはならないのではないでしょうか。
睡眠時無呼吸の人っていろいろいますからね。日中の眠気などの自覚症状がひどい人から、家族からいびきがひどいと言われるくらいで、自覚症状が全くない人とか。
自覚症状の強い人が、CPAPをつけて眠気が改善されたりすれば、モチベーションが上がってつけ続けてもらえることが多いですが、自覚症状のもともとない人は、マスクの不快感が強くて、続けられない人がいますよね。
そういう人につけ続けてもらうために、AHI低下の他に、将来の脳卒中や心筋梗塞を予防する目的でつけ続けてください、と言っていたんですけどね。こういう事実を知ってしまうと、これから情熱を持って診療続けられないですよ!
かば:そんなにCPAP治療に情熱もってやってたんですか?(;一_一)