イントロから方法までです。
CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea.
N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):919-31.
McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, Luo Y, Ou Q, Zhang X, Mediano O, Chen R, Drager LF, Liu Z, Chen G, Du B, McArdle N,Mukherjee S, Tripathi M, Billot L, Li Q, Lorenzi-Filho G, Barbe F, Redline S, Wang J, Arima H, Neal B, White DP, Grunstein RR,Zhong N, Anderson CS; SAVE Investigators and Coordinators.
2016年9月27日
その1
かわうそ:睡眠時無呼吸は、いびきとか日中の眠気が問題なだけではないんですよね。
夜間に一時的な低酸素血症になって、交感神経が活性化され、高血圧になったり、酸化ストレスや炎症反応が亢進、血液過凝固傾向になるとされています。また、胸腔内の陰圧が上がることで、心臓、大血管に強い力学的ストレスがかかるそうです。
これまで報告されているコホート研究では、睡眠時無呼吸と心血管系疾患、特に脳卒中などのイベントには強い相関があるとされてきました。
かば:われわれには特になじみのある分野ですね。
かわうそ:直接的に関与したことはないですが、噂はよく聞いてました。
さて、過去のRCTでは、CPAP治療によって、血圧が低下するとか、血管内皮細胞の機能、インスリン抵抗性の改善などの効果も報告されています。
これまでの観察研究の報告では、CPAP治療により心血管系の合併症や死亡を、特にアドヒアランスの良い人で減らすと言われていました。
心血管系疾患の既往のある人の4-6割で、OSAが合併していると言われています。こういう患者さんでは、十分な薬物治療をしているにも関わらず心血管系のイベント再発のリスクが高いので、CPAP治療を追加することでリスクを予防できるかもしれないと言われていました。
かば:これまで証明はされていなかったんでしょうか?意外ですね。
かわうそ:この確認のため、今回のSAVE study(Sleep Apnea Cardiovascular Endpoints study)というものをやってみた、ということです。「OSA患者の心血管系イベント発生率の減少の点でCPAPが効果があるかどうかを評価するためにデザインされた二次予防研究」らしいです。
かば:ちょっとEが強引ですね。
かわうそ:方法です。研究デザインとしては、国際的、多施設共同、ランダム化、パラレル、オープンラベルの研究デザインです。シャムCPAPではないので、どちらのグループに入ったかは、医師も患者もわかっているんですが、エンドポイントとなるイベントの評価については、ブラインドされているということです。
Philips Respironics社とResMed社が研究資金と機械を提供しました。
かば:けっこうプレッシャーかかりますね。結果を出さないといけない。
かわうそ:参加者は7カ国、89の施設で集められました。適格基準は、45-75歳で、心血管系または脳血管系疾患があり、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸と診断されていること、です。閉塞性睡眠時無呼吸の診断はPSGではなく、ApneaLinkというResMedの機械をつかって、ODI4>12で診断しています。あと、あんまりにも自覚症状が強い人は除外されています。ESSが15以上、または重症の低酸素血症、チェーンストークス呼吸で居眠り運転事故のリスクが高いと診断された場合は除外されています。
かば:なんで自覚症状が強い人は除外なんでしょうか?
かわうそ:書いてなかったので私の推測なんですけど、自覚症状が強い人に対して、CPAP治療をしないのが、倫理的に問題があると判断されたのかもしれません。
参加者はCPAP治療に対して最低限のアドヒアランスが必要ですので、1週間のrun-in periodを設けてシャムCPAPを着けて寝てもらい、平均3時間以上着用できた人を選んでいます。
CPAP治療は、Philips Respironics社のREMstar AutoのMかPRが使われています。はじめの一週間はオートマチックモードにセットされ、それからは記録されたデータに基づいて計算された90th percentileの圧に固定されます。心血管系リスクを下げるための投薬治療などはガイドラインに従って行われました。また、すべての参加者は睡眠習慣改善のためのアドバイスをうけています。診察は、1、3,6,12ヶ月とそれ以降1年毎に設定されました。年一回の診察以外に半年ごとに電話での調査も行われました。
測定項目は、血圧、脈拍、投薬内容、health behaviorが記録されています。CPAP群では、CPAPのアドヒアランスのデータもです。ランダム化のとき、6ヶ月、2年、4年目に身体測定と、質問票としてESS、SF36、HADS、EQ5Dを取っています。
どちらの群に割り当てられたかを知らないcommittee memberが、心血管系のアウトカムを判定しました。
プライマリーエンドポイントは、心血管疾患の複合アウトカムです。ここには、心血管疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、心不全、急性冠症状、一過性脳虚血発作による入院です。
前もって指定したセカンダリーエンドポイントとしては、カテーテル治療、心房細動、糖尿病発症、全死亡などを追加しています。あとは自覚症状、QOL、気分などを見ています。
安全性についてのエンドポイントには、運転中や仕事中に怪我に繋がったような事故など、参加者の居眠りに関係した項目があり、これも興味あるところです。
統計は省略します。
かば:かまわんよ。
かわうそ:しのびねえな。
その2へつづく。