2016年11月16日

31歳女性、不妊症 その1

呼吸器科ではあんまり関係ない主訴ですが、実は馴染みのある疾患が原因です。


2016年9月28日

その1


かわうそ:31歳女性。不妊症で受診されました。そのほかは元気な方です。

かば:副鼻腔気管支症候群ですか?

かわうそ:なるほど。残念ですが違います。
子宮卵管造影検査を早速しています。Fig 1です。
見たことないのですが、キャプションによると、子宮の形は問題ないようです。
ただし、卵管は、中枢部分は問題ありませんが、末梢の方では拡張していたり、欠損しているように見える部分があるようです。
また、卵管采から腹腔内に漏出するはずの陰影が見えません。
つまり、排卵はあるかもですが、卵管を通っていかないのではないかと予想されます。

とにかく人工授精を2回施行されています。しかし妊娠しません。これはおかしいということで、さらに精査されました。

ここで最近の人工授精事情について、けっこうスペースとって説明しています。生きのいい(?)卵子を探す技術みたいなのも発達しているようなので、かなり成功率は高いはず、2-3回の失敗でおかしいと思うべき、みたいなことが書いてあります。なれない分野の英語でしたので、言葉の意味はよくわかりませんが。

かば:とにかくすごい自信ですね。

かわうそ:どの時期にどういう処置するのかについても、けっこういろいろマーカーがあるらしいです。ふーんって感じですけど。

さて、これから、どのような情報が知りたいですか?

かわうそ:受精卵ができたということは、卵子には問題ないのだと思います。戻したはずなのに妊娠しないわけですから、着床しないのが問題なんですよね。子宮内膜の問題でしょうか。
あとは、凝固系とか?それくらいしか思いつきません。

かば:そうですね、抗リン脂質抗体症候群は思い浮かびます。不規則抗体とか血液型不適合とかもでしょうか。

かわうそ:卵管の狭窄がどれくらい影響しているのかはわかりませんが、骨盤内感染ということで、性感染症とかは聞いておくべきでしょう。ここでも、B型肝炎、C型肝炎、淋病、クラミジア、HIVなどは調べられており、全部陰性でした。
さらに、人工授精にふさわしい卵子が得られているようですので、それほど心配しているわけではないのでしょうが、月経のサイクルなども聞いています。ちょっと月経困難症があるようですが、基本的には問題なし。なぜかpap染色しています。これも問題なし。たぶん産婦人科のお作法なんだと思います。

かば:拒食症とかはどうでしょう?

かわうそ:なるほど。それも聞いていて、ありませんでした。

生活歴としては、ネパール生まれ、インド育ち、アメリカに渡ってからはサウスウェストに住んで、それからマサチューセッツに来ています。
ネパール、インドは結核が蔓延していますので、アメリカ人にしては珍しくBCGワクチンを打っています。結核の家族歴ありません。

また、自覚症状や身体所見、血液検査では特に問題ありません。

かば:ホルモン検査は?

かわうそ:いろいろやられていますが、ちょっとコメントできないですね。月経周期によって正常値が変わるんでしたよね…。正直手におえません。
とりあえず、問題なしということで勘弁してください。

かば:卵子を作るところまでは正常なんですし、この症例ではあまり関係なさそうですね。
卵管を通らないところ、子宮内膜に着床しないところが問題なんですね。

かわうそ:そこで、次は子宮鏡をしています。子宮内膜にはポリープや線維化、瘢痕などはなく、見た目は正常だったようです。
子宮内膜生検をしました。その結果がfig 2ですけど、どう思います。

かば:…。あ、肉芽腫がありますね。

かわうそ:これらは全部肉芽腫らしいです。乾酪壊死はありません。抗酸菌や真菌などは、染色してまして認められなかったようです。
鑑別診断としては、どうでしょうか?

その2へつづく