この治療が早く広まるといいと思います。
Eunice LK, Theodore SH, David GF, Avinash K, Jochen KL.
2016年11月28日
その2
その1からつづき
かば:扁平上皮癌でも腺癌でも同じメニューでよいんですか?どちらが予後が悪いんですかね?
たしか、日本は扁平上皮癌が多くて、外国は腺癌が多いんでしたっけ?
でも、うちなら多分CDDP+S1とかが多いように思います。
かわうそ:なるほど。すいません。経験ないので何も言えません。
ここではEOXというのを最初に検討しています。けっこうエビデンスはあるようなんですが、いかんせん、休薬期間がないらしいんです。よく知りませんが、けっこう恐怖を覚えます。epirubicin、oxaliplatin、capecitabineと、けっこう緊張感のある薬が並んでいますし。
あとは、FOLFOXかなっていっています。
かば:大腸がんでつかうのかと思ってました。
かわうそ:ほかにはCDDP+CPTも候補に上がっています。
このあたりの選択についても、きちんと論文を参照しています。これらを比較したRCTで、効果は同じくらいだけど副作用が少なかったという理由で、FOLFOXがよいのではないかと言っています。
放射線との併用もしやすいみたいです。FOLFOXとCDDP+FUの比較の論文が引用されています。さらに、放射線治療のスケジュールについても、いろいろ論文を引いた上で、計画したと言っています。
かば:えらいですね。
かわうそ:この態度は見習いたいですね。
しかし、治療完遂後、フォローアップのPET-CTで遠隔転移再発がありました。で、2nd lineの治療についてなんですけど、どうしますか?
かば:そもそも食道の腺癌ってほとんど見たことありませんし。
肺癌でも、2nd lineの治療ってあんまりガイドライン通りやっていませんよね?
かわうそ:DTX単剤くらいですけど、若くて元気だからという理由で1st lineと同じようにプラチナダブレット使いますしね。
ここでは、CPTとかDTXの単剤治療かな、とか書いてあります。最近では、PTXとサイラムザの併用が話題らしいですけど。
ただし、BSCとこれらの治療を比較した論文によると、1.5ヶ月の生存期間延長が期待できるくらいらしいんです。サイラムザのレジメンでも、生存期間を約2ヶ月伸ばすくらいです。
かば:…。やっぱりかなり厳しいですよね。
かわうそ:でも、これだけではたぶんこのケースレポートになりません。
ここでは何をしているかというと、一か八か遺伝子変異の検索をしているんです。
胃癌では、HER2過剰発現があれば、乳がんの治療薬のトラスツマブの効果が期待できるなんていう知見もあるし、とかいろいろ書いてあります。
かば:胃癌なら必ずHER2は調べていますよ。
かわうそ:このあたりは何をやってるのかよくわかりませんので、結論だけ言うと、PIK3CAという遺伝子変異がみつかったということと、METの増幅があることがわかりました。
かば:どちらも知りませんけど。でも、ふたつの遺伝子変異があるのって珍しくないですか?
かわうそ:そうですね。そのあたりは後の質疑応答でツッコまれていますが、そもそも、こんな症例ないのでコメントのしようがないって言ってます。
PIK3CAの方については、食道領域では胃癌での報告があるくらいだそうです。乳癌では、トラスツマブに対する反応がよくないものの、予後はよいという報告があるようです。肺癌では、EGFR遺伝子変異陽性のうち、少数で見つかることがあって、EGFR-TKIに対する耐性の獲得に関係するようです。
METの増幅については、とくにhigh-gradeの食道腺癌に認められて、アグレッシブな経過をたどることが多いそうです。この症例でも、放射線化学療法に対してPDでしたし、当てはまりそうですね。
で、クリゾチニブを使っています。
かば:え?ザーコリですよね。あれはALK融合遺伝子だと思っていましたが、そういえば関係あるんでしたっけ?
かわうそ:よくご存知ですね。ネットで調べてみたところ、もともとc-Met遺伝子の阻害薬として開発されていたらしいんです。
MET増幅って、消化器系の悪性疾患では多いような気がしますけど、あんまりクリゾチニブを使うって聞かないですよね?
かば:適応ないですよね。
かわうそ:で、内服開始してからのPET-CTをみると、原発巣も転移巣も全く取り込みなくなっています。
かば:すごいですね!
かわうそ:この症例では四年間のみつづけてまだ効果が持続しているようで、めでたしめでたし、といえるかどうかわかりませんが、かなり幸運だと思います。
最近、ザーコリって、アレセンサとかとの比較でいいところがあまりないように思っていましたので、これでちょっと見直しました。
2016年11月28日
その2
その1からつづき
かば:扁平上皮癌でも腺癌でも同じメニューでよいんですか?どちらが予後が悪いんですかね?
たしか、日本は扁平上皮癌が多くて、外国は腺癌が多いんでしたっけ?
でも、うちなら多分CDDP+S1とかが多いように思います。
かわうそ:なるほど。すいません。経験ないので何も言えません。
ここではEOXというのを最初に検討しています。けっこうエビデンスはあるようなんですが、いかんせん、休薬期間がないらしいんです。よく知りませんが、けっこう恐怖を覚えます。epirubicin、oxaliplatin、capecitabineと、けっこう緊張感のある薬が並んでいますし。
あとは、FOLFOXかなっていっています。
かば:大腸がんでつかうのかと思ってました。
かわうそ:ほかにはCDDP+CPTも候補に上がっています。
このあたりの選択についても、きちんと論文を参照しています。これらを比較したRCTで、効果は同じくらいだけど副作用が少なかったという理由で、FOLFOXがよいのではないかと言っています。
放射線との併用もしやすいみたいです。FOLFOXとCDDP+FUの比較の論文が引用されています。さらに、放射線治療のスケジュールについても、いろいろ論文を引いた上で、計画したと言っています。
かば:えらいですね。
かわうそ:この態度は見習いたいですね。
しかし、治療完遂後、フォローアップのPET-CTで遠隔転移再発がありました。で、2nd lineの治療についてなんですけど、どうしますか?
かば:そもそも食道の腺癌ってほとんど見たことありませんし。
肺癌でも、2nd lineの治療ってあんまりガイドライン通りやっていませんよね?
かわうそ:DTX単剤くらいですけど、若くて元気だからという理由で1st lineと同じようにプラチナダブレット使いますしね。
ここでは、CPTとかDTXの単剤治療かな、とか書いてあります。最近では、PTXとサイラムザの併用が話題らしいですけど。
ただし、BSCとこれらの治療を比較した論文によると、1.5ヶ月の生存期間延長が期待できるくらいらしいんです。サイラムザのレジメンでも、生存期間を約2ヶ月伸ばすくらいです。
かば:…。やっぱりかなり厳しいですよね。
かわうそ:でも、これだけではたぶんこのケースレポートになりません。
ここでは何をしているかというと、一か八か遺伝子変異の検索をしているんです。
胃癌では、HER2過剰発現があれば、乳がんの治療薬のトラスツマブの効果が期待できるなんていう知見もあるし、とかいろいろ書いてあります。
かば:胃癌なら必ずHER2は調べていますよ。
かわうそ:このあたりは何をやってるのかよくわかりませんので、結論だけ言うと、PIK3CAという遺伝子変異がみつかったということと、METの増幅があることがわかりました。
かば:どちらも知りませんけど。でも、ふたつの遺伝子変異があるのって珍しくないですか?
かわうそ:そうですね。そのあたりは後の質疑応答でツッコまれていますが、そもそも、こんな症例ないのでコメントのしようがないって言ってます。
PIK3CAの方については、食道領域では胃癌での報告があるくらいだそうです。乳癌では、トラスツマブに対する反応がよくないものの、予後はよいという報告があるようです。肺癌では、EGFR遺伝子変異陽性のうち、少数で見つかることがあって、EGFR-TKIに対する耐性の獲得に関係するようです。
METの増幅については、とくにhigh-gradeの食道腺癌に認められて、アグレッシブな経過をたどることが多いそうです。この症例でも、放射線化学療法に対してPDでしたし、当てはまりそうですね。
で、クリゾチニブを使っています。
かば:え?ザーコリですよね。あれはALK融合遺伝子だと思っていましたが、そういえば関係あるんでしたっけ?
かわうそ:よくご存知ですね。ネットで調べてみたところ、もともとc-Met遺伝子の阻害薬として開発されていたらしいんです。
MET増幅って、消化器系の悪性疾患では多いような気がしますけど、あんまりクリゾチニブを使うって聞かないですよね?
かば:適応ないですよね。
かわうそ:で、内服開始してからのPET-CTをみると、原発巣も転移巣も全く取り込みなくなっています。
かば:すごいですね!
かわうそ:この症例では四年間のみつづけてまだ効果が持続しているようで、めでたしめでたし、といえるかどうかわかりませんが、かなり幸運だと思います。
最近、ザーコリって、アレセンサとかとの比較でいいところがあまりないように思っていましたので、これでちょっと見直しました。