N Engl J Med. 2015 Sep 3;373(10):939-45.
Nable JV, Tupe CL, Gehle BD, Brady WJ.
2015年9月16日
その3
その2から続き
かわうそ:呼吸困難もあります。1割位と報告されているようです。COPDよりも肺高血圧症の方がシビアな低酸素を起こしやすいので要注意です。酸素投与、高度を下げる、SABA吸入くらいしかやりようがありません。
気胸も報告されていますが、トロッカーキットが入っているわけではないので、できるものでやってくださいとあります。留置針とシリンジで脱気するってことでしょうか。よく英文の意味がわからないんですけど、Non medical equipmentを使えと書いてあるんです。
かば:酸素チューブとか尿道カテーテルにハンガーの針金をスタイレットのように入れて使うという話を聞いたことあります。
かわうそ:マンガとかではボールペンも使いますよね。芯が内筒役ですよね。
きりん:ひゃー。
かわうそ:ただですよ、聴診と打診で気胸を診断できます?レントゲンもエコーもないですから、機内のしょぼい聴診器でできますかね?
かば:聞こえないらしいですよ。
この場合、気胸なのか肺梗塞なのかを迷うと思いますけど、挿管と脱気を両方ともするのが正解という話を聞いたことあります。
きりん:ええー。それって挿管して強制換気して、緊張性気胸を作った上で脱気するってことですよね…。しかも手製のトロッカーで…。
かば:さらに、ウォーターシールももペットボトルで作るらしいですよ。
きりん:私なら、もし居合わせても、「高度を下げて下さい…」としか言えないです。
かわうそ:あ、あとけっこう大事なことが一番初めの方に書いてありました。まず、通訳を探せと。
きりん:ふふっ。それは大切ですね。
かわうそ:たぶんCAさんがやってくれるんでしょうけど。ただ、プライバシーとか守秘義務とかのことがあるので注意だそうです。
次に、伝染病についてです。とりあえず疑ったら隔離です。機内のどこにそんなスペースがあるのでしょうか?かなり心細いんですけど。まあ、せめて接触感染、飛沫感染で広がらないように注意して下さい。地上のスタッフと協議して、対応を相談しましょう。場合によっては検疫が必要になるかもしれません。
最後に、Psychiatric emergencyについてです。頻度は5%以下です。空港も機内でもありとあらゆることが精神的な負荷をかけてくるので、例えば怒り出す乗客なんかがけっこういるようです。鎮静薬はないので、とりあえず自分の身を守ることを第一に考えてくださいとのことです。
結論としては、けっこうな頻度でよばれる可能性があるということ、でも、できることは非常に限られているということ、その割にはしっかりと責任問題が発生するということ、でしょうか。
かば:おそろしいですね。日本だと、こういう時に医療者を守る法律がないので、不幸な結果になった場合に訴えられるリスクはやはりありますよね。どこの国籍の飛行機かっていうのが重要かもしれません。
かわうそ:医療者側に過失がない、よくがんばったと言われても、裁判に巻き込まれるだけでストレスですからね。手を挙げないのも仕方ないですね。
ただ、自分はこれを読んで、結局やれることがこれくらいしかないのなら、けっこう気楽に手を挙げられるかも、と思っちゃいましたけどね。だれがやってもあんまりかわらなくないですか?
かば:内科医なので、外傷がなかなか対応できないのがネックですけど。
エピネフリン2種類ありますけど(千倍希釈と万倍希釈)、これどう違うんでしたっけ?
あと、抗ヒスタミン剤がけっこう手厚いので、アレルギーも多いのかもしれないですね。
でも、生食がなくなったらどうしましょう?何パックあるのか気になりますね。
かわうそ:いろいろ考えるとますます動けなくなりますね…。
とにかくお気をつけて行ってきて下さい。