CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL.
Case 27-2015. A 78-Year-Old Man with Hypercalcemia and Renal Failure.
N Engl J Med. 2015 Aug 27;373(9):864-73.
Powe NR, Peterson PG, Mark EJ.
2015年9月9日
その3
その2からつづき
かわうそ:肉芽腫性疾患でなぜカルシウムが上昇するのかということも書いてあります。
肉芽腫の中のマクロファージが1,25-dihydroxyvitamin Dを腎外産生するので、骨吸収と腸管でのカルシウム吸収が促進されます。25-hydroxyvitamin Dが活性化されたものが1,25-dihydroxyvitamin Dです。普通は腎臓で活性化されます。今回のケースでは、25-hydroxyvitamin Dは正常でしたが、1,25-dihydroxyvitamin Dを測定していれば有用だったかも、とコメントされています。MGHケースカンファレンスはいろいろ勉強になりますね。
きりん:なつかしいですね。
ベンガルトラ:かばさん、これ内科専門医試験に出るよ!
かば:まじですか。たしかに過去問でいつも戸惑うところです…。
かわうそ:先生のお役に立てればうれしいですけど。
入院時の検査で、これだけの鑑別診断を考えて、検査を出しているというところがすごいですね。ま、入院時と言っているだけで、実は翌日上級医に怒られながらだしたのかもしれませんけど。
最後に、縦隔リンパ節生検で診断がついています。また病理所見を述べてもらいたかったのですが、残念ながら写真にやたらGというマークがついています。これはさすがにゴルゴ13ではなくて、Granuloma、肉芽腫のGですよね。融合傾向のある非乾酪性肉芽腫です。最近はあまり非乾酪性肉芽腫という単語は流行らないみたいです。
さて、治療はどうしましょうか。ちなみに、結核については、除外するため抗酸菌培養を行い、陰性が確認されるまではリファンピシンとイソニアジドでけっこうしっかり加療されたようです。さらに、潜在性肺結核としてイソニアジドだけで治療しました。
かば:サルコイドーシスでステロイドを使うから結核の治療もしっかりしたんでしょうね。
かわうそ:なるほど。確かにそうですね。気づきませんでした。ありがとうございます。
で、ステロイド投与で腎機能はよくなりました。さらに、どうも認知機能も改善したようです。ということで、脳サルコイドーシスがあったのでは?と考察されています。よかったですね。喜ばしいですね。
ベンガルトラ:高Ca血症の意識障害ではなくて?
かわうそ:うーん。ただ、今回高Ca血症を認めるずっと前から認知症を指摘されてドネペジルとかを内服されていたわけなので、やっぱり脳サルコイドーシスなんでしょう。
ベンガルトラ:なるほど。ちなみに、PETの所見だけど、サルコイドーシスって縦隔だけでなく、肺野にも淡い取り込みがあって、それで診断がつくってことがありますけど。このケースでは言及されてないですね。
あとからみてみると、胸部CTでの葉間の小粒状影がサルコイドーシスを示唆しますね。
それにしても、この症例は教育的ですね。
かわうそ:私は知らないことばかりで逆に笑っちゃいました。
きりん:普段使わない知識はどんどん忘れちゃいますよね。
かわうそ:症例的にも面白かったのですが、私にはDr. Eugene J Markに再会できたところがさらにポイント高いところですね。もうワンポイント、前みたいに剖検対象の家族が乗り込んできて感謝の言葉を述べたり、何回かの記念のカンファレンスで出資者(?)がコメントしたりとかがあるともっとよいんですけど。
でも、この前読んだのは、患者本人も出席していてコメントしていました。今度紹介しますね。