2016年4月19日

間質性肺疾患の緩和 その1

間質性肺疾患の終末期についての検討です。とりあえず背景、方法、患者背景までです。

End-of-life care in oxygen-dependent ILD compared with lung cancer: a national population-based study.
Thorax. 2016 Feb 10. pii: thoraxjnl-2015-207439. doi: 10.1136/thoraxjnl-2015-207439. [Epub ahead of print]
Ahmadi Z, Wysham NG, Lundström S, Janson C, Currow DC, Ekström M.

2016年3月9日

その1

かわうそ:間質性肺疾患の終末期についての検討です。
進行期の間質性肺炎をここでは在宅酸素を導入されている人と定義して、癌の終末期の人について比較しています。

かば:ふんふん。

かわうそ:スウェーデンの全国登録コホートを使っています。
2011年1月から2013年10月までの死亡した方について、死亡前7日間の症状と治療について、主治医があとから記憶をたよりに回答するという形式です。
間質性肺炎が285人、肺がん患者が1万人です。

かば:圧倒的な人数の差ですね。レトロスペクティブな研究なんですね?

かわうそ:でも、登録自体は前向きみたいです。
背景としては、間質性肺疾患は、特に特発性肺線維症は予後不良で進行期には症状が重くてQOLが低下します。肺癌と違って、予後不良な割には緩和ケアが少ないのが問題です。
最近では非腫瘍領域でも緩和ケアの関心が高まっていて、COPDと緩和ケアなんかはちょっと話題になっているようですけど。
で、実際のところ間質性肺炎ではどうなのか、という疑問に対する研究です。

方法に入りますが、スウェーデンでは在宅酸素を導入した患者に関する全国登録調査というものがあるみたいです。そのうち、間質性肺疾患の患者を対象にして研究しています。この期間内に490人が亡くなっていました。
さらに、SRPCという緩和ケアに関して登録される全国調査があって、そこにも登録されていた間質性肺疾患患者が285人ということみたいです。

かば:登録の割合が高いですね。さすが(?)スウェーデンですね。

かわうそ:肺癌の方については、SRPCが全肺がん患者の80%以上が登録されていて、この期間中に1万人くらい亡くなっているということです。

ただ、この評価項目はけっこうざっくりしているんだな、という印象を受けました。
「死亡の1週間前に、以下の様な症状がありましたか?」という質問について、あとから主治医が登録するというものです。
どんな症状があったか、それが薬でどれくらい解消されたか、寛解したのか、部分緩和か、非緩和かを回答します。
薬を使ったかというのも、はいかいいえかぐらいで、投与量は不問です。

結果です。Table 1に載っています。患者背景としては、年齢は間質性肺疾患の方が78歳で少し高くて、女性の割合は逆に少ないという感じですね。

かば:Fig 2は在宅酸素導入後の生存曲線ですね。けっこうショッキングですね。

かわうそ:間質性肺炎で在宅酸素を導入した場合、生存期間の中央値が8ヶ月で、カプランマイヤー曲線だと、50%生存期間は6ヶ月くらいですからね。
在宅酸素療法が呼吸困難に対する緩和ケアの一環とすれば、緩和ケアの認識が甘くて、導入が遅すぎるということになるのだと思います。

かば:なるほどね。

その2につづく