2016年4月22日

間質性肺疾患の緩和 その2

間質性肺疾患の終末期についての検討です。
結果と感想です。

End-of-life care in oxygen-dependent ILD compared with lung cancer: a national population-based study.
Thorax. 2016 Feb 10. pii: thoraxjnl-2015-207439. doi: 10.1136/thoraxjnl-2015-207439. [Epub ahead of print]
Ahmadi Z, Wysham NG, Lundström S, Janson C, Currow DC, Ekström M.

2016年3月9日


その2

その1からつづき

かわうそ:Table 2がmain resultになります。
予想通りなのですが、間質性肺疾患患者の方が肺癌患者と比べて、緩和ケアを行った割合が少なかったという結果でした。
そもそも、「予期されない死」というものが、間質性肺疾患の方が多いです。15%くらいということです。
また、死に場所にも差があります。ホスピスに入るのは肺癌患者が多く、間質性肺疾患患者はナーシングホームが多いです。
あと、EOL discussionについても評価されてます。本人や家族と話している割合です。

かば:でも、間質性肺炎でも半分くらいされているんですね。

かわうそ:わりと間質性肺疾患患者に対して、がんばって話していますよね。逆に肺癌では少ない印象です。でも、統計的には有意差をもって、肺癌患者の方が多く話をされていることになります。

さらに、治療に関する指標が、肺癌ではしっかりあるんですね。例えば疼痛についてのスケールとかです。きちんとvalidateされたスケールを用いてい診療している割合が、どんな症状についても肺癌患者の方が多かったようです。

かば:うちの病院でも、STAS-Jを使っているのは癌の人だけですよね。

かわうそ:看護師さんがやってますね。恥ずかしながら、あれを参考にして治療をするということはないんですけど…。

かば:われわれもどういうものか知っているべきですよね。

かわうそ:このように指標をきちんと使って評価しているとか、本人家族とDiscussionをしているということから、肺癌の方が間質性肺疾患よりも、緩和ケアをしっかりやっているということを言いたいようです。

次に症状については、呼吸困難が間質性肺疾患の方がやっぱり多いです。Table 3に書いてあります。
不安や嘔気は有意差なかったようです。
また、間質性肺炎では、「不明」という回答が多くて、この辺も、肺がんの方がしっかり見ている、スケールに則って記録されている、ということらしいです。

かば:疼痛は肺癌では重要な指標ですけど、意外に間質性肺炎でも半分くらいの人で訴えているんですね。でも、どういう痛みなんでしょうね?気胸でトロッカーとか?

かわうそ:あとはステロイドで圧迫骨折とか?でも、半分もありますかね?

かば:そういえば、嘔気もなぜなのかわかりませんね。モルヒネの嘔気に対する治療ですかね。
間質性肺疾患でこの指標を評価するのはちょっと疑問がありますけど。

かわうそ:モルヒネは量が少ないので、そんなに嘔気言われた経験ないんですけど。
向こうではもっと早期に、大量に、というガイドラインでもあるのでしょうか?

かば:癌と間質性肺疾患とどちらもある人はどうなっているんでしょうか?そういう人なら疼痛あるかも。

かわうそ:それはあんまり書いてなかったと思います。
Table 4が、治療により症状が緩和されたかどうかです。間質性肺疾患の方が完全寛解が難しいようです。
結果としては、間質性肺疾患では、緩和ケアサービスの利用がすくないこと、症状の重さやニーズが過小評価されている、そもそも評価されていないのでは、ということがわかりました。
症状が寛解しているのも肺癌の方が多いようですので、これもきちんとスケールにそって評価されて、治療が始まっているからなのではないか、と書いてあります。

かば:緩和ケア導入のタイミングが難しいですけどね。HOT導入がきっかけになりそうですね。
そういえば、前亡くなった方もやっぱりHOT導入から半年だったのを思い出しました。

かわうそ:うちの病院で、がん以外の病気で緩和サポートチームに介入依頼できるんでしょうか?前の病院では、癌かHIVしかだめと言われてましたので。

かば:多分できます。「非癌」という項目があったように思います。