2016年5月2日

Too Much of a Good Thing その2

何かよいものが過剰なようです。
答え合わせです。


CLINICAL PROBLEM-SOLVING
Too Much of a Good Thing
N Engl J Med 2016; 374:873-878
Lauren A. Beste, M.D., Richard H. Moseley, M.D., Sanjay Saint, M.D., M.P.H., and Paul B. Cornia, M.D.

2016年3月16日

その2

その1からつづき

かわうそ:これだけ調べて原因がわからなかったのでどうするかというと、ここがすごいところだと思うんですけど、またしつこく問診に戻ってるんですよね。
その結果、ビタミンAをしこたま摂っていたということがわかりました。1367000IUでした。

かば:なんと!

かわうそ:これは、単位の設定が間違っていますよ。もうちょっと切り上げてわかりやすい数字にすべきではないでしょうか、かつてのジンバブエドルじゃないんですから。
…、ちなみにジンバブエドルといえば、ゴルゴ13の史上最高ケタ数の報酬で有名なエピソード、「標的は陽気な悪魔」ですよね。なんと驚愕の1300京ジンバブエドルです。

さらに面白いことに、この患者さんは強迫性障害なので、内服量を詳細に記録していました。
その記録によると、入院の直前には、たしかに申告された量だったので、うそは言っていないことになります。その前には山ほど飲んでいましたけど。
このエピソードからすると、強迫性障害というよりも、アスペルガーを疑いますけどね。へんに真面目に、聞かれたことしか答えないところとか。言いたくなくてごまかしてるだけかもしれませんけど。

でも、ここまでわかると、肝機能障害、門脈圧亢進症以外に、この患者さんが最初から申告していた(らしい)食思不振、皮膚障害、脱毛などもビタミンAの過剰摂取の症状でなかったか、ということが思い当たります。

実は、診断前にビタミンA=レチノールの血中濃度も測定していましたが、これは正常でした。あまり役に立たないんです。ビタミンAは脂溶性なので、あまり血中にはでないのかもしれませんね。

かば:「これDAKE」で、ビタミンD、A、K、Eは脂溶性です。有名な語呂合わせです。

かわうそ:ビタミンA過剰症と診断されたという情報を得た上で、そういう目で生検標本を見直すと、いちおうチョビっとだけ先ほど述べたようなそれらしき病変がみつかったとのことで、めでたく診断確定しています。

あとはわりと自然に肝機能障害、門脈圧亢進症の症状が治っています。ビタミンAが自然に減っていったのでしょうか。

もちろん強迫性障害の治療もやっています。栄養士との相談とか、認知療法とか。

かば:いいわけが書いてありますね。ビタミンA過剰症は程度が様々だとか、この患者ではとても見つけるのが難しかったとか。

かわうそ:まあ針生検は標本が小さいですからね。
やっぱり、この疾患を疑っている、と思った上で検査しないと見落としてしまいます。鑑別診断あげるのは大切ですよね。

それにしても、サプリの健康被害ってあるんですかね?あんまり経験しないように思いますけど。

かば:一応肝障害とか、あと間質性肺炎とかあるんじゃないですか。

かわうそ:あ、そうですね。

かば:日本ではそんなに大容量では売っていないから、目立たないのかもしれません。

かわうそ:メラトニンとかもそうですよね。向こうでは時差ボケのサプリとして市販されてますが、日本ではなぞの高額な薬価です。