2015年11月16日

エボラ出血熱疑い患者を診るということ その3

鑑別診断をあげています。

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL.
Case 28-2015. A 32-Year-Old Man with Fever, Headache, and Myalgias after Traveling from Liberia.
N Engl J Med. 2015 Sep 10;373(11):1060-7.
Biddinger PD, Hooper DC, Shenoy ES, Bajwa EK, Robbins GK, Branda JA.

2015年10月14日

その3

その2からつづき

かわうそ:実はこの症例を担当した先生方は、おそらく最初からエボラっぽくないなって思っていたようです。教訓的なのですが、エボラ疑いということで、そこで思考が停止してはいけないんですよね。エボラが否定されるまで、他の疾患の可能性が頭からすっぽり抜け落ちているようではいけないんです。
もちろん、他の慣れている疾患や症状なら、いろんな疾患の可能性を考えて検査なり治療なりを平行して行うのは普通にできている作業だと思うんですが、エボラとかだと名前に負けてしまいそうです。
というわけで、何の可能性を考えればよいでしょうか?

かば:ふつーのかぜでもこれくらいありますよね?インフルエンザとか。あとマラリアとか。旅行者の発熱で鑑別に上がる疾患はもちろん考えないといけません。

かわうそ:さすがです。筆者もマラリアをかなり早い段階で疑っています。しかも、熱帯熱マラリアです。この時点で、3日熱でも4日熱でもなく熱帯熱マラリアと言い切るところがかっこいいですよね。私は違いがよくわかりませんので。あと、まだ1回しか熱が出ていないのに言い切れますかね?熱の出る間隔で区別するもんだとばっかり思っていましたけど。

かば:4日熱は間が3日で、3日熱は間が2日で、熱帯熱はどうでしたっけ?間隔が適当で重症化しやすいんでした?

かわうそ:
たぶんそうです。イヤーノートのコピーを入れてあるのでご参照下さい。
この症例では、本来予防目的のドキシサイクリンは帰国後も1ヶ月内服しないといけないのに、その情報がなぜか患者に伝わっていなかったようです。あとは旅行者腸炎、インフルエンザ、レプトスピラ、レジオネラ、HIVなどを考えるべきとのことです。
ただし、なんといってもエボラ疑いですので、かなり検査が制限されるんですよ。(TOT)

ただ、安心して下さい。検査部もちゃんと準備をしていますよ?何人かの技師がいくつかの検査ができるように練習したみたいです。

マラリアといえば血液のスメアと思っていましたが、やっぱり感染制御が厳しいんでしょうか。ここではPCRを使った迅速キットで診断しています。Figureに詳しく載っていますが、やっぱり熱帯熱マラリアでした。

きりん:ふーん。

かば:でも血液使うんですよね。Antigen in bloodってかいてありますね。

かわうそ:ですね。スメアよりは危なくないのかもしれませんけど。
とにかく、エボラ出血熱疑いの患者に対応するためには、エボラ出血熱疑いだけど他の疾患の場合という状況をきちんと想定しないといけないんですね。エボラの検査、これはPCRだけできればよいというわけではなく、マラリア、ナイセリア、サルモネラなどの検査が、もちろん血算生化学など一般的な検査もですが、そういうことを感染制御しながらできるような環境にしないといけないわけです。

その4につづく