福島原発事故と他の大きな原発事故の比較についてまとめています。
Health effects of radiation and other health problems in the aftermath of nuclear accidents, with an emphasis on Fukushima.
Lancet. 2015 Aug 1;386(9992):479-88.
Hasegawa A, Tanigawa K, Ohtsuru A, Yabe H, Maeda M, Shigemura J, Ohira T, Tominaga T, Akashi M, Hirohashi N, Ishikawa T, Kamiya K, Shibuya K, Yamashita S, Chhem RK.
2015年10月21日
その2
その1からつづく
次に過去70年の間に起きた大きな事故のことが表にまとめられています。440以上の事故が起きていますが、そのうち大事故は5つです。旧ソ連のKyshtym、イギリスのウィンズケール、アメリカのスリーマイル島、また旧ソ連のチェルノブイリ、そして福島です。
表を見てみると、さすがにチェルノブイリは圧倒的に大きな事故です。放射性物質の量だとか、汚染区域だとか。しかし、避難された方の人数では、福島がチェルノブイリを逆転しています。人口密度の問題なんでしょう。後、気になる点としては、Release of radioactivityの項目で、他の4つは概算が出ているのに対して、福島だけかなり幅があります。131Iが100000ー500000TBqで137Csが6000ー20000TBqです。これは把握できていないのか、または現在進行形で排出されているのか、それとも他に理由があるんでしょうか。
ただ、原発事故、とくに福島のような原子炉が水素爆発を起こして破壊された場合、問題になるのはウランとかプルトニウムなんじゃないかと思うんです。半減期が長いので。それについては全く触れられていないのは、なんとしても不可解ですね。
というのもですね、私が今回準備するにあたって最も参考にした資料は、実はゴルゴ13なんです。ご存知でしょうか、ゴルゴ13が原発の水素爆発をギリギリで防ぐ神業的な狙撃をする傑作「2万5千年の荒野」を。((o(´∀`)o))
…あ、ご存じない?すいませんでした。(´・ω・`)
でも、当直室で見かけたらぜひ読んでみてください。原発について勉強になりますし、ゴルゴ13と一緒に最悪の事態を防ごうと奮闘する技師の姿に胸が打たれますし、何よりその技師に対するゴルゴ13が見せる敬意みたいなものも感じられて、すごくいいんです。ちなみに、私が一番好きな話は、「AT PIN-HOLE」ですが、これもご存じないんでしょうね…。昔のゴルゴ13では、ほんのたまにですが友情めいたものを見せる話があって、私はそれが好きなんです。
また脱線した話が長くなっていますが、この話の中で、原子炉が吹き飛んだ場合の影響について対策室で語っている場面があります。引用します。
「最悪の場合、どれほどの被爆が出るのだ?」
「はあ…。爆発した場合、風下の地点について申し上げますと…、炉から2マイル以内は全員1日目に脳をやられて全員死亡…。20マイル離れた地点にとどまった人は…重症の放射線障害が出ます。急性白血病で髪は抜け落ち、50%が1週間以内に死亡。50マイル離れていても1週間で発病するものもいます。その後も、白血病、甲状腺ガン、遺伝子への影響で子々孫々までも長期の影響が現れます…。誰も住めないでしょう…。」
「わずか1%の放射線で大げさな…。ヒロシマも百年は草木も生えないと言われたが、あのとおりだ!」
「ケタが違います!原発はヒロシマの原爆の200倍から400倍あるんです!それに死の灰で、地表や海、川、大気…、あらゆるモノが汚染されます!数百マイル離れでも、農作物は作れなくなります。…死の世界です…。」
「ロスが死の世界になる!…それはどのくらいの期間かね!?百年、いや千年?」
「いえ…。原子炉のウラン235は分裂してプルトニウム239という毒性の強い同位体となります…。その半減期は2万5千年…」
「2万5千年の荒野か…」
さて、この後、各事故について少しまとめてあります。福島第一原発の項目を読んでみましょう。ゴルゴ13が狙撃してくれなかったので、福島第一原子力発電所では冷却水の循環が改善せず、メルトダウンと原子炉の水素爆発を起こしました。まさに先ほどの会話で恐れられていたのと同じ状況ですよね。
でも実際は、福島はそんな荒野になっていません。むしろ、うわさでは「風の谷のナウシカ」に出てくる腐海みたいになっていると。
…すいません、腐海は言い過ぎでしたね。
マンガに書かれていることを信用するなんてバカみたい、とお思いでしょう。ただ、ゴルゴ13についていえば少し別格だと思います。作家の佐藤優氏も、外交官の時に取り寄せて読んでいたと言ってました。あと、谷垣禎一衆議院議員も「BEST 13 of ゴルゴ13」にコメント載せているくらいですよ。社会情勢を知るための入門として、ゴルゴ13が有用というのは、インテリジェンスの高い方にとってもある程度コンセンサスがあると思います。
なので(?)、少なくとも福島の事故が起きる前までは、一般的には原子炉が爆発した場合にこういう状態になりうるという認識があったはずです。
もちろん現時点ではこの予想は外れていることになります。このあたり、誰かに検証してほしいんですけど。ただ、なんといっても2万5千年という悠久の時に渡る予想です。ここ4-5年で荒野にならなかったことで決めつけるってことはできないと、私は思うんですけどね。
その3へつづく