2016年3月7日

A Complementary Affair その2

ネットで検索してみると、シェーグレン症候群の補完症状(?)と補体をかけたタイトルということです。
確定診断と治療経過についての部分です。

CLINICAL PROBLEM-SOLVING. 
A Complementary Affair.
N Engl J Med. 2016 Jan 7;374(1):74-81.
Mogabgab ON, Osman NY, Wei K, Batal I, Loscalzo J.

2016年1月27日

その2

その1からつづき

さて、ここで精査で何をしますか。

かば:腎生検ですね。

かわうそ:そうですね。あと貧血についても調べるべきとのことです。

かば:Cre=1.6とかなので、それほど貧血をきたすほどの腎機能障害ではないってことですか。

かわうそ:ここで題名が利いてきます。補体を測定してみたいところです。

貧血については、血清鉄は減っているものの、結合能は正常で、フェリチンは十分あって、ビタミン・葉酸は問題なしでした。LDH上昇もありません。というわけで、貧血については慢性疾患に伴うものなのでしょうという診断でした。

あとはレントゲンですね。どうですかね。写真載っていますが、あんまり間質性肺炎とは言い難いですけど。

かば:左中肺野が少し淡いかもしれません。

かわうそ:そうかもしれません。でも、印刷したものではよくわかりません。
CTでは、胸水が溜まっているのと、背側に間質陰影がありました。重力効果にも見えますが。

かば:でも、気管支血管壁が肥厚していますね。
ひょっとしたら誤嚥とか肺水腫があるのかも、ですね。

かわうそ:このあたりも少しすっきりしませんが…。
血液検査では、ANA、リウマチ因子が上がっていますし、補体は消費されていました。というわけで、クリオグロブリン血症などの免疫複合体による血管炎を鑑別にあげましょう。

ちなみに、クリオグロブリン血症は、HCVとの関連が有名ですので、一応調べておいて下さいということです。

かば:そうでした。

かわうそ:ここで腎生検をしています。わかりますか?私は解説見ないとさっぱりです。

かば:膜性腎症ですよね。

かわうそ:さすがですね。糸球体膜の増殖です。さらに、矢印のところには無構造物が充満しているように見えます。微小血栓が毛細血管に詰まっているとのことです。
IgMが糸球体の毛細血管壁に、点状または巣状に沈着しているということも、免疫染色で証明されています。
ここまではどうも急性の経過を表しているようなんですが、次の写真で、LambdaとKapperの軽鎖が、Kapper優位に沈着しているのがわかります。これは、マイルドな間質性腎炎の像ということです。

かば:ふんふんなるほど、たしかに。

かわうそ:ただ、あんまり慣れていない分野なので、ちょっと理解はいまいちです。原文あたって下さい。

これらが合併して、急性の腎機能障害を引き起こしたんだろうな、ということが考察されています。

で、治療はどうしますか?

かば:免疫複合体が原因なので、ステロイドと免疫抑制剤ですね。

かわうそ:そうですね。けっこう大量のプレドニゾロンとシクロフォスファミド、アザチオプリンなどが使われています。ステロイドは18ヶ月かけてゆっくり減量しています。
治療のかいあって、腎機能障害や他の症状、検査データ異常などもよくなっています。

かば:めでたしめでたしですね。

かわうそ:まとめとして、シェーグレン症候群は基本的には潜在性の疾患ですけど、間質性肺炎や気管支拡張症以外にも、腎機能障害とか発疹とか、血管炎とかリンパ増殖性疾患なども、忘れちゃいけない、と書いてありますね。
あとは、クリオグロブリン血症の分類とか、マニアックな知識も書いてあります。
実は、シェーグレン症候群の1割以上でクリオグロブリン血症を起こすようです。

かば:意外に多いですね。

かわうそ:でも、たいてい無症状らしいです。
あと、治療としては、ここでもまたリツキシマブです。実はRCTがあります。コントロール群で生存率3%なところ、魔法の薬リツキシマブで治療した群では、なんと生存率が60%にアップします。

かば:ほんとですか?これは読まねばならない論文ですね。

かわうそ:もっと話題になっても良さそうですけどね…。