N Engl J Med. 2015 Aug 6;373(6):561-6.
Damaraju D, Steiner T, Wade J, Gin K, FitzGerald JM.
2015年8月19日
その1
かば:きりんさんは戦い疲れて倒れたみたいですね。昨日たくさん緊急入院当たってましたし、夜も呼ばれていたようです。しかも誤嚥性肺炎ばっかり…。
かわうそ:大変ですね…。
さて、今回はNEJMのClinical problem solvingです。
咳嗽なんて、とお思いになるかもしれませんが診断は非常に難しいです。あと、慢性咳嗽の知識のおさらいになると思います。
非喫煙者の63歳の男性が、2年間の咳嗽で受診されました。2年って相当長いですね。咳嗽は乾性で、夜に悪くなると。最初は旅行中の上気道感染から悪化した印象があって、かかりつけ医で抗生剤を処方されたがよくならない。次にICS/LABAを出されて、ちょっと良くなったかもしれない、というところです。この時点でどう考えますか?
かば:アレルギー素因があるのか?とかいうところです。それか何らかの炎症があるのか、というところですね。
かわうそ:そうですね。いちおう、ICS/LABAがちょっと効いたかもしれないというのはヒントになりそうです。喘息っぽいところがあるのかな、と。まず、8週以上続いているので慢性咳嗽ですね。主な原因としては、後鼻漏、喘息、GERDによるものなどが考えられます。この症例ではGERDっぽい症状があるみたいですね、書いてありませんが。ただ、経過が非常に長いから喘息が考えやすいかな、というところです。
ただ、追加情報があります。5年間の経過で、時々全身の関節痛があったり、筋肉痛があったり、最近2年では時々盗汗を認めるということです。関節痛は2週間位続いた後、完全に消失するようです。膠原病内科受診して、抗体とかいろいろ調べたようですが、膠原病は否定的。他には、ツベルクリンは陰性、超音波、レントゲンなども異常なし。あと、下肢の浮腫が時々あるんですが、これも自然に軽快するようです。危険なドラッグ使用無し。喫煙飲酒ペットなし。先ほどの吸入薬と痛みに対するイブプロフェンの他は薬もないようです。
この時点で、先ほどの鑑別診断から変わるところはありそうですか?
かば:うーん。ヘンな病歴ですね。いわゆる普通の咳の鑑別で上がってくるものとは違ってきそうです。膠原病があって背景に間質性肺炎があるのかもと考えますが、それならもっとレントゲンで引っかかってきて欲しいですね。CTじゃないのでわからないのかもしれないですが。レントゲンではわかりにくいような気道病変があるのかもしれません。
難しいですね。関節の話とかがでてくると、私は一気に思考がストップしてしまうので。
かわうそ:イブプロフェンを使っているというのは、喘息にはちょっと良くないかもしれませんね、とここに書いてあります。ひょっとしたら内服のタイミングと咳が関係しているのかもしれない。
あと、この時点では関節痛、盗汗がどう関わってくるのかはわからない、ということです。間質性肺炎は今のところ考えにくいようです。
かば:身体所見上は問題ないんですよね。
かわうそ:聴診所見は一切書いていないんですが、問題なしでいいんじゃないでしょうか。
あと、吸入薬が効果ありそうで、でもいまいちなところとかは、手技に問題があるのではないかとかアドヒアランスが良くないんじゃないかとかの検討が必要ですね。
で、追加の検査どうしますかね?
かば:肺機能ですね。アレルギー素因の採血検査と。後鼻漏がないか耳鼻科的検査も。あと、今なら吸気呼気のCTを取りますね。咳という観点からはそうなりますね。
かわうそ:なるほど、吸気呼気のCTですね。それは思いつきませんでした。ここにはそこまで書いていないんです。フローボリューム取って正常、CTとって正常でした。あと、メサコリン試験しています。気道攣縮なしでした。
かば:メサコリン試験はなかなかできないですもんね。
かわうそ:かなりnegative predictive valueが高いらしいです。これで喘息は否定的ということです。喘息でないのなら、ということでGERDを考えて本当は24時間PHモニタリングをしたかったらしいんですが、患者さんが拒否されたのでPPIを処方されています。そりゃそーだろーなと思います。しかし、フォローに来ませんでした。
ところが、3年後に新しい症状が出てきたということで受診されています。半年前からガスでお腹が痛いとか下痢とかです。下痢も自然に消えたりしています。この患者さん、2年の咳で受診したという経緯からも分かる通り、ちょっとのんびりしていますね、下痢については高繊維食をとるのが増えたからじゃないのか、とか考えているみたいで笑えます。足の腫れもひどくなって痛くて歩けなくなるほどのこともあるようですが、でもこれも自然によくなると。相変わらず関節痛と筋肉痛はあって、咳に関してはPPIは全く効果なしです。
かば:効かなかったから、ヤブだと思って来なかったんですね。
かわうそ:そうですね。来なかった理由までは書いていませんが。あと、頭痛とか、一過性の両側の視野異常などもでています。これはさすがにERを受診されて、CRPが微増、赤沈亢進、WBCは正常だけど好中球が増えています。好酸球は増えていません。他は問題なさそうです。頭のCTは正常です。
ここでどんな診断をつけるか、というとこです。
かば:うーん難しい。
かわうそ:ですよね。
その2へ続く。
咳嗽なんて、とお思いになるかもしれませんが診断は非常に難しいです。あと、慢性咳嗽の知識のおさらいになると思います。
非喫煙者の63歳の男性が、2年間の咳嗽で受診されました。2年って相当長いですね。咳嗽は乾性で、夜に悪くなると。最初は旅行中の上気道感染から悪化した印象があって、かかりつけ医で抗生剤を処方されたがよくならない。次にICS/LABAを出されて、ちょっと良くなったかもしれない、というところです。この時点でどう考えますか?
かば:アレルギー素因があるのか?とかいうところです。それか何らかの炎症があるのか、というところですね。
かわうそ:そうですね。いちおう、ICS/LABAがちょっと効いたかもしれないというのはヒントになりそうです。喘息っぽいところがあるのかな、と。まず、8週以上続いているので慢性咳嗽ですね。主な原因としては、後鼻漏、喘息、GERDによるものなどが考えられます。この症例ではGERDっぽい症状があるみたいですね、書いてありませんが。ただ、経過が非常に長いから喘息が考えやすいかな、というところです。
ただ、追加情報があります。5年間の経過で、時々全身の関節痛があったり、筋肉痛があったり、最近2年では時々盗汗を認めるということです。関節痛は2週間位続いた後、完全に消失するようです。膠原病内科受診して、抗体とかいろいろ調べたようですが、膠原病は否定的。他には、ツベルクリンは陰性、超音波、レントゲンなども異常なし。あと、下肢の浮腫が時々あるんですが、これも自然に軽快するようです。危険なドラッグ使用無し。喫煙飲酒ペットなし。先ほどの吸入薬と痛みに対するイブプロフェンの他は薬もないようです。
この時点で、先ほどの鑑別診断から変わるところはありそうですか?
かば:うーん。ヘンな病歴ですね。いわゆる普通の咳の鑑別で上がってくるものとは違ってきそうです。膠原病があって背景に間質性肺炎があるのかもと考えますが、それならもっとレントゲンで引っかかってきて欲しいですね。CTじゃないのでわからないのかもしれないですが。レントゲンではわかりにくいような気道病変があるのかもしれません。
難しいですね。関節の話とかがでてくると、私は一気に思考がストップしてしまうので。
かわうそ:イブプロフェンを使っているというのは、喘息にはちょっと良くないかもしれませんね、とここに書いてあります。ひょっとしたら内服のタイミングと咳が関係しているのかもしれない。
あと、この時点では関節痛、盗汗がどう関わってくるのかはわからない、ということです。間質性肺炎は今のところ考えにくいようです。
かば:身体所見上は問題ないんですよね。
かわうそ:聴診所見は一切書いていないんですが、問題なしでいいんじゃないでしょうか。
あと、吸入薬が効果ありそうで、でもいまいちなところとかは、手技に問題があるのではないかとかアドヒアランスが良くないんじゃないかとかの検討が必要ですね。
で、追加の検査どうしますかね?
かば:肺機能ですね。アレルギー素因の採血検査と。後鼻漏がないか耳鼻科的検査も。あと、今なら吸気呼気のCTを取りますね。咳という観点からはそうなりますね。
かわうそ:なるほど、吸気呼気のCTですね。それは思いつきませんでした。ここにはそこまで書いていないんです。フローボリューム取って正常、CTとって正常でした。あと、メサコリン試験しています。気道攣縮なしでした。
かば:メサコリン試験はなかなかできないですもんね。
かわうそ:かなりnegative predictive valueが高いらしいです。これで喘息は否定的ということです。喘息でないのなら、ということでGERDを考えて本当は24時間PHモニタリングをしたかったらしいんですが、患者さんが拒否されたのでPPIを処方されています。そりゃそーだろーなと思います。しかし、フォローに来ませんでした。
ところが、3年後に新しい症状が出てきたということで受診されています。半年前からガスでお腹が痛いとか下痢とかです。下痢も自然に消えたりしています。この患者さん、2年の咳で受診したという経緯からも分かる通り、ちょっとのんびりしていますね、下痢については高繊維食をとるのが増えたからじゃないのか、とか考えているみたいで笑えます。足の腫れもひどくなって痛くて歩けなくなるほどのこともあるようですが、でもこれも自然によくなると。相変わらず関節痛と筋肉痛はあって、咳に関してはPPIは全く効果なしです。
かば:効かなかったから、ヤブだと思って来なかったんですね。
かわうそ:そうですね。来なかった理由までは書いていませんが。あと、頭痛とか、一過性の両側の視野異常などもでています。これはさすがにERを受診されて、CRPが微増、赤沈亢進、WBCは正常だけど好中球が増えています。好酸球は増えていません。他は問題なさそうです。頭のCTは正常です。
ここでどんな診断をつけるか、というとこです。
かば:うーん難しい。
かわうそ:ですよね。
その2へ続く。