2015年9月25日

まさかの臨死体験前向き研究 その2

Lancet. 2001 Dec 15;358(9298):2039-45.
Near-death experience in survivors of cardiac arrest: a prospective study in the Netherlands.
van Lommel P, van Wees R, Meyers V, Elfferich I.

2015年8月25日

その2

その1から続き

かわうそ:結果です。まず患者背景ですが、344人の患者がいて、うち複数回CPR受けている人がいるので、509回のCPRが施行されました。平均62歳、やや男性が多いです。74%の人がCPRの5日以内にインタビューされました。2年後にインタビューした人が74人です。さすがにだいぶ減っていますね。薬はフェンタニルやジアゼパム、ミダゾラムなどの鎮静薬が使われたとありますが、あんまり相関関係はなかったようです。344人のうち、234人(68%)が蘇生されています。
さて、お待ちかねの臨死体験の報告ですが、なんと、344人中62人(18%)が報告しています。臨死体験のレベルも定量的に分けられていますが、12%がある程度深い臨死体験を報告し、2人はかなり深い臨死体験をしたようなんです。臨死体験をした人が1割以上ですから、ちょっとセンセーショナルな結果ですよ、これは。
でも、続くこの一連の文章、これはちょっとどうなんでしょうか。医学論文では異例と思うんですけど、よっぽどこれを言いたかったんだろうな、という筆者の熱みたいなものを感じます。(*´∀`*)

かば・きりん:え?

かわうそ:まあ聞いてみて下さい。看護師さんの証言がけっこうなボリュームで書いてあります。この看護師さんが夜勤の時に、44歳の男性がチアノーゼと昏睡状態で運ばれてきました。どうやら1時間位前に倒れているところを通りすがりの人に発見されて、運ばれてきたと。この時にはもうすでにCPRされていて、これから挿管という時です。でも、どうやら入れ歯だったので、とりあえず入れ歯を外して、この看護師さんが台車の上に置きました。挿管して蘇生して、一週間後くらいに病棟に薬を届けに行ったら、この患者さんが言うことには「あ、この看護師さんが俺の入れ歯がどこにあるか知っているはずだ」。看護師さんもびっくりですよね、蘇生処置中で意識ないはずですから。さらに「あんた、俺の入れ歯を台車の上にのっけたよね?」と言っています。どうやら、このときこの患者さんは幽体離脱をしていて、医療スタッフが何をしているのか上から見ていたというんです。だから、自分の入れ歯がどこにあるかも知っている。

きりん:はー。

かわうそ:さらに、たぶんなんですけど、どうやら処置中にスタッフの間には「あ、これはダメかも」という雰囲気があったようなんです。でも、この患者さんは、自分は生きているんだから、あきらめないでくれ、というようなことを何とか伝えようと努力したけどダメだった、と言っていたらしいんですよ。

きりん:ふふっ。

かば:すごいね。

かわうそ:これがLancetに載っているんですよ。Editorも、「ここは何とかならんものか」、とか言わなかったんでしょうかね?でも、やっぱり筆者はここを書きたかったんだと思います。「ここは外せない」と突っぱねたと私は信じています。
結果に戻ります。Table 2では、先ほどの臨死体験の定義に従って、どれくらい深い体験だったのかを定量化しています。けっこう、死を怖がらない経験は多いですね(56%)。他にも、死の自覚は半分以上ありますね。あとは2-3割といったところです。
Table 3は、患者背景との相関関係です。基本的には関係がないんですが、どうやら臨死体験をした群の方が、さらに言うと深い臨死体験をした方が、30日以内の死亡率が高いようです。臨死体験をした方が、亡くなりやすいということです。この辺が何を意味するのかは難しいですね。

かば・きりん:ふーむ。

その3へ続く